第7期生 天野 慧さん

天野 慧さん 第7期生
株式会社NHK出版
デジタルセンター

– 現在のお仕事について簡単にご紹介ください

出版社で、デジタル事業を担う部署に所属しています。書籍や雑誌のプロモーションサイトの構築と運用やデジタルコンテンツの開発を担当しています。

– 本専攻に入学しようと思ったきっかけを教えてください

2011年9月に開催されたBeatセミナーに 参加して、鈴木先生の講演を伺ったことが、きっかけです。その時にSCC(注1)やGBS(注2)といったインストラクショナルデザインの理論に触れて、 こんな面白そうな研究があるのかと、とてもわくわくしました。私自身、作り手としてインストラクショナルデザインの理論を背景に教材を作ってみたいと思い ました。
その直後、首都大学東京で行われたJSETの全国大会に行ったのですが、たまたま鈴木先生とお会いし、「おー、よく来たな、しっかり勉強しろよ。興味あるんだったら熊大来いよ」とおっしゃっていただきました。
ちょうど、その年の夏に営業からデジタルコンテンツを担当する部署に異動したということもあり、ITに詳しくもなく、出版社のデジタル担当として自分に何 が出来るのか、悩んでいました。そんなときに教育工学に出会ったので、きちんと勉強して、理論的な背景に基づいて、ウェブコンテンツの制作の仕事をしてい きたいなと思ったんです。

– 実際に入学してみてどうですか?

こんなに大変だとは思いませんでした。あまり下調べをせず、インストラクショナルデザインを学んでみたいという勢いだけで、門を叩いてしまった自分を後悔しました。本当にきついです(笑)。
教育についての知識はもともとありませんでしたし、研修担当などの業務経験もありません。掲示板でディスカッションをする課題が用意されているのですが、 最初のころは本当に戸惑いました。同期のみなさんは知識も経験も豊富だったので、自分の考えを投稿するのに尻込みしてしまいましたね。

– マインドセットが変わるきっかけがあったんですか?

とくに大きなきっかけがあったわけではありません。ただ、この一年間、授業の課題や飲み会、Facebookグループなどで、同期や先生方とずっと議論を してきました。そのほかにもWebCT(注3)上の掲示板の投稿をよく読んで、少しずつでもコメントするといったような試行錯誤を繰り返していました。こ ういったことを通して、少しずつマインドセットが変わってきたように思います。だんだん慣れていって、お互いの意見の違いが面白いと思うようになりまし た。同期には大学職員の方、医療関係者、教育ベンダーで研修を担当されている方と、さまざまなバックグラウンドを持つ方がいらっしゃるので、それぞれ課題 へのアプローチが異なります。意見の違いをとても面白いなと思いましたし、自分なりの意見をレポートなり、コメントなりにして、みなさんからフィードバッ クをもらいたいと思うようになりました。

– 入学してから1年たちますが、今の段階で収穫だと思っていることはありますか?

自分の考えやアイデアをプロトタイプなど、何らかのかたちにすることではじめて有益なフィードバックを得ることが出来るということに気づきました。 GSISのほとんどの科目では、学生がちょっとずつ分析レポートを出したり、チェックリストやコンテンツの設計図を作ったりといった型がそれぞれの課題に 用意されています。学生に何か形にするための、お膳立てがしてあるんです。1年間の課題を通して、とても有益なフィードバックを先生方や同期の方にいただ きました。ここで学んだプロセスをしっかりとものにして、今後の仕事に生かしていきたいなと思います。

– 大変だったことやつらいことはありますか?

仕事の忙しい時期と重なった時がつらいですね。学習から離れる期間が出来てしまうと、なかなか勉強に戻って来ることができなくなります。熊大ポータルには 学習進捗画面がトップにあるのですが、課題の提出が遅れると、該当の科目が赤く表示されます。それで、「まっ、いいか」と思って先延ばしにすると、学習進 捗画面が真っ赤かになるんですよね。これが精神的にすごく堪えるんですよ。なんだかeラーニングから拒絶されているようで…、学習にどんどん戻れなくなっ てしまうんですよね。この悪循環に陥ったときはつらかったですね。

– 仕事と重なった時は、どうやって元のペースに戻しましたか?

1年前期は仕事と重なってものすごく課題に遅れてしまいました。夏前にさすがにこれ以上、学習から離れてしまったらおしまいだと思って、締め切りは相当超過していまいましたが、とにかく少しずつやって、何とか終わらせました。
後期は少し反省をして、最初からeラーニングづけの毎日を送ろうと決めました。2年間しかないんだから、がつがつやろうと。社会人大学院生にとって、削れるのは睡眠時間しかありませんから、とにかく寝ないでやるしかないと覚悟を決めました。

– もともとご興味があったSCCは、実際どうでしたか?

かなり厳しいものがありましたね…。入学当初、コンテンツの設計にストーリー形式を採用しているということで、ロールプレイングゲームのように楽しめるも のだと思っていました。しかしながら、実際に経験してみると、夢中でハマるということはなく、もちろん学ぶことの意義は重々承知しておりましたが、勉強は ただただ大変でした。
もちろん、良かった点もあります。言葉にするのが難しいのですが、ストーリーがあることで、学習している自分のことを客観的に見つめることができたと思い ます。前期のストーリーでは架空のeラーニングベンダーに入社して実務をこなしながら、コンテンツ開発のために必要なスキルを学びます。科目の課題をこな すために学ぶのではなく、なぜその科目を学ぶことが必要なのか常に意識しながら学習を進めることができたように思います。それから、学習後に修了時のコン ピテンシーに関連付けてリフレクションする機会が用意されていたので、結局、科目を通して自分が何を学んだのか、客観的に考える機会を得ることができまし た。想定とは違いましたが、教材も自分も発展途上で、自分が学習者としても設計者としても考えるというのも、これまでにない経験でした(注4)。

– 教員や学生間のコミュニケーションはどのようにとられていますか?

学生間はFacebookでやり取りをしています。先生方には、メールで質問することがほとんどですね。ただ、メールで質問をする場合、ある程度、問題意 識が明確になっていないと活用できないということがあるように思います。だから、先生方が参加するセミナーや飲み会に、なるべく行くように心がけていま す。そうすれば、必ずしも自分の問題意識や疑問点が明確になっていない状況でも、「最近こんなことを考えています。こんなことに悩んでいます」とお話すれ ば、何かしらのフィードバックをいただけます。特に入学してすぐのときは、知識があまりにも少なく、自分が何を分からないかすら分からないというような状 況でしたので、意識的にそうした場に足を運びました。
そういう意味では、初学者のまだ明確となっていない質問について、どうコミュニケーションするかはeラーニングにおける学習支援の課題かもしれません。飲 み会で会うのが一番のコミュニケーションと言ってしまうのも、eラーニング大学院としてどうかと思いますし…。

– 最後に、入学を考えている人にメッセージをお願いします

GSISで学んでいると、たくさんの情報が入ってきます。先生方から教わるアカデミックな部分や最先端の理論はもちろんですが、同期や先輩方と交わす他の 業界のことなども、刺激的な話に満ちています。入学してから、インストラクショナルデザインといっても色んな切り口があるし、本当にたくさんの可能性があ るんだと、気づかされました。また、いろんな方がいらっしゃるのですが、この専攻の良いところは、立場やポジションに関係なく、議論が活発なところですか ね。みなさん、「学びのためならば」という感じで、とても熱心に研究に取り組まれています。オンライン、オフラインに関わらず、ここからたくさんの刺激を 受けてきました。
本を読んだり、勉強会に足を運んだり、オンラインコンテンツで勉強したり、わざわざ大学に行かずとも学びの機会はいくらでもありますが、こうして立場を超 えて色んな方と学び合える場はなかなかないのではないでしょうか。僕は日々、その楽しさとありがたみを痛感しています。まだ卒業していないのでメッセージ となると恐れ多いのですが、そんなGSISの魅力が少しでもお伝えすることができたとしたら嬉しいです。

注1:SCC(ストーリー・センタード・カリキュラム)の略。提示されるストーリーに沿って各科目の課題に取り組む。博士前期課程1年次に、選択科目として履修できる。
注2:GBS(ゴール・ベース・シナリオ)の略。SCCの元になった、ストーリー型教材の設計のためのインストラクショナルデザイン理論。
注3:WebCTとは代表的なLMS(Learning Management System)の一つ。様々な教材の提示、スケジュール管理、成績管理などができ、インターネットに接続されているコンピュータからブラウザを用いて利用 する。熊本大学で全学的に採用している。WebCTの現在の名称はBlackboard。
注4:学習者としてSCCを体験する「統合型カリキュラム演習I」とは別に、設計者として新しいSCC教材の設計や、本専攻のSCCの改善提案をする「統合型カリキュラム演習II」という科目が用意されています。

(2013年2月インタビュー)

※ 登場している方々のご所属および本専攻のカリキュラムや科目に関する記述は、インタビュー当時のものです。

 

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