第7期生 森田 淳子さん

森田 淳子さん 第7期生
キエフ国立大学 国際交流基金派遣日本語専門家(2014年8月赴任予定)

– 現在のお仕事について簡単にご紹介ください

日本語教師をしています。GSIS在学中の2年間のうち1年間はロシアの大学で日本語を教えていました。

– 本専攻に入学しようと思ったきっかけを教えてください

いくつかのきっかけが重なって入学に至りました。日本語が母語でない方に日本語を教える仕事をしているのですが、授業改善や教材作成について調べるうちに 「インストラクショナルデザイン(以下ID)」というキーワードを目にする機会が増えていました。日本語教育分野では先輩の甲斐さんが私より以前から GSISで学んでいますが、日本語教育分野でIDを知っている人は結構多いと思います。例えば、鈴木先生の「教材設計マニュアル」(注1)が参考文献と なっている日本語教師向け書籍(注2)もありますし、私も入学する2~3年前にはIDについて調べるようになっていて、その中で鈴木先生の著書やGSIS の存在にもたどり着いていました。なかなか入学までは決心できなかったのですが、ちょうど熊本に引っ越すことになり、地理的にも熊本大学というのはいいな と意識するようになりました。
もう一つきっかけがありました。熊本に来る前は、九州大学の留学生センターで留学生に日本語を教えていたんです。私の大学生時代は紙で履修登録をするのが 当たり前だったのに久しぶりに大学へ来てみると、履修登録は電子化されていますし、教員がLMSを使えるようになっていて、「便利になったな~」と思いま した。クラス分けのためのプレイスメントテストもオンラインで実施できるよう移行しているのを目にして、「これはちょっとITを勉強しなきゃ」と思いまし た。私はどちらかというと新しいツールをまず使ってみたいと思うほうなのですが、メリットだけではないという声も聞き、良し悪しの判断ができるようになる ためにもeラーニングについて学びたいと思ったんです。今、当時を振り返りながらお話していて、IDとITの2つのきっかけがあったように思います。自身 の授業改善の手がかりになるのではと関心を持っていたID、知識や技術を得たいと思っていたIT、そして熊本に来たタイミング、点と点がつながった感じで す。

– 実際に入学してみてどうですか?

一番楽しみにしていたのが「インストラクショナル・デザインI」だったのですが、それ以外の科目もすごく濃くて、激しく楽しい学びでした。毎週の締切は大 変でしたが、楽しかったのは同期の皆さんとの学びですね。協働学習は自分が足を引っ張り申し訳ないと感じる時もありましたが、皆で励ましながら乗り切れま した。さまざまな分野で授業や研修を「よりよくしよう!」と本気で取り組んでいる仲間と出会えたことは、大きな財産です。

– どのように学習を進めていましたか?

1年前期の半年間は熊本にいましたが、基本的には自宅から専攻ポータルにアクセスして、学習を進めていました。GSISの場合、熊本にいる学生は少ないで すけど、週2~3回は熊本大学の学生研究室へ行って勉強していました。先生方に会える機会もあったので、これはラッキーでしたね。 その後、1年後期から2年前期の1年間はほとんどロシアにいたので、「eラーニング実践演習」の協働作業では同じチームの他の2人のメンバーに時間を調整 してもらいました。ほぼ毎週土曜日に、日本にいる2人は午後3時、私がロシアで午前10時という時間を決めてSkypeミーティングをしていました。直接 話して決めたり作業したりする必要があることはSkypeで、あとはメールや科目の掲示板上でやり取りしました。他の(学生の)皆さんはチーム課題のため にミーティングをしていたと思いますが、私の場合は異国の地にいたので、Skype上で会って話せるだけでもモチベーションの維持につながりました。当時 のチームメンバーに感謝しています。
あと、海外で仕事をしながら、休学せずに学び続けることができるというのは、本当にeラーニングの恩恵を授かったと思います。ロシアはネットワーク環境が 不安定な時もありましたが、そのかわりWiFi環境は充実していて、不安定ながらどこでもそれなりにつながります。カフェはたいていどこでもFree WiFiですね。課題を提出するようなことはできなくても(それは安定した環境でやりますが)、資料を閲覧するぐらいはカフェでもできるので、(大学での 日本語の)授業の合間にちょっと外に出てつないだりしていました。課題をしっかりやるのは平日の夜か、土日が多かったです。
ロシアからの帰国後、約1か月間の北方領土国後島での業務を経て現在は福岡在住なので、最近は大学へは行っていないですね。でも、修士研究の場合、対面の 方が進みやすい時もあります。Skypeなども使いますが、修士研究の指導の合田先生とは福岡で対面ゼミをお願いすることもありますし、私が熊本大学へ行 くこともあります。修論の山場の10~11月ぐらいは、2週間に1回ぐらいは熊本か福岡でお会いする時間をつくっていただきました。ロシアや国後にいたこ ろはあまり研究が進まなかったので、先生の方が危機感をお持ちだったかもしれません(笑)。何度か(2年間での修了を)あきらめそうになったことがあった のですが、絶妙なタイミングで「進捗どうですか?」とメールをいただき、続けられました。
今までの学生の中では、一番色々な場所でeラーニングを体験したのではないかと思います。対面、遠隔、同期、非同期…あらゆる手段を使って学びました。学習者側でのこの経験は、学びを提供する側に戻った時に役立つと感じています。

– 一番役に立った科目はなんですか?

「インストラクショナル・デザインI」ですね。入学前にとても期待していて、それが期待通りでした。チームでペースを合わせて進めるのは大変でしたし、教 材の形成的評価のため協力者に時間を割いてもらうのはありがたくも申し訳ない気持ちになりましたが、その後ほかの科目での協働作業や「特別研究Ⅱ」で教材 設計・開発を行う時に、テキスト(注1)を読み返してプロセスを思い出しながら進めることができました。これから、自分の仕事にももっとIDを活かしてい きたいと思います。 入学前には意識していなかったんですが、今振り返って印象的なのは「基盤的教育論」です。教える仕事をしていますが、学習者としての経験を含めて根本から 「教育とは」と深く考え意見を交換する機会はあまりなかったので、受講前の「教育に関する自説」から最後の振り返りまで、単位にはならないですが(笑)と てもよかったです。また、この科目で学んだルーブリックやポートフォリオは日本語教育においても導入事例が増えています。教えたり学んだりする上での心構 えから、すぐ授業に役立つことまで、多くを学びました。 あとはもう、とにかくIT系の科目です。基礎から実務的な面まで学べてとてもありがたかったです。とくに修論は最後まで迷ったんですけど、Moodleを 使って自分で教材を作ることを選びました。ITを使わない、授業設計のようなものを研究テーマにしようかとも考えたんですけど、やはり入学したからには やってみようと思いました。修了時コンピテンシーも意識しながら、(コンテンツ開発の専門家へ発注することに比べたら)クオリティは低くても、学んだこと を全部活かして自分で作ってみようと。ロシア語の翻訳作業は手伝ってもらいましたが、コンテンツは全部自分で作りました。入学前の自分では本当に考えられ ないことです。2年前期の「eラーニング実践演習II」の時にかなりMoodleを使ったので、実際に作れるようになったと思います。最初にMoodle を使ったのは、1年前期の「学習支援情報通信システム論」で、当時は「難しいな」と思いました。その時に喜多先生がおっしゃっていた「ITは慣れです」と いう名言があるんですが、本当にその通りだと思います。だんだん慣れてきたので。課題のために使うのと、いざ自分で教材を作ろうと思うのでは意識も変わり ますね。実際に作り始めてみると、Moodleは多言語対応なので「ロシア語インストールもこんなに簡単で、なんて便利なんだMoodle」と思って。多 国籍の生徒が在籍するクラスで教える時にもすごく使えるシステムだと思いました。 IDやITのことばかりお話していますが(笑)、IPで学んだことも国内外で教材作成を行う上で必要な知識ですし、これから教師養成や教師研修など人材育 成に関わる業務、あるいはチームでの教材開発プロジェクトなどに携わる機会があればIMで学んだことも振り返ると思います。そういう意味では、「4つの I」すべてがこれから役立ちそうです。

– SCCはどうでしたか?

入る前は詳しく知りませんでした。先輩方の「学生の声」は読んでいたので「特徴のあるものがあるらしい」ということは知っていましたが、SCCを学びたいから入学したというわけではありません。
やってみると、面白かったですね。前期のSCCはGSISで学ぶ最初の学期ということもあったので、スケジュール管理に役立ちました。それから、正直に申 しますとIDやITの科目と比較して入学前はIMやIPの科目への関心が低めだったので、関心や意欲を高めたり課題が自分の現実の仕事とかけ離れている時 にイメージを膨らませたりする上で、ストーリーが助けになりました。学習進捗の遅れから種明かし(統合型カリキュラム演習II)を2年まで引きずってし まったので、1年で終えていればこういう研究テーマも良かったかもしれないと、後になって思いました。もちろん、修了して研究が終わりではないので、いつ か挑戦してみたいです。
SCCを履修した学生間でも意見が分かれるところですが、種明かしはもっと早くても良かったかもしれないですね。知らないで手探りすることも大事ですが、 こちら(学習者)も信頼がおけないというか、どういう意図や効果があるか知ってから体験すると、信頼感を持って学べるという気がします。最初に知りすぎる と、先生方の意図通りにやろうとしてしまう恐れもあるので、途中で種明かしがいいかなと思います。前期の終わり、後期SCCが始まる前ぐらいでもよかった のかなと。

– 大変なことはありましたか?

「役立った科目」と表裏一体だと思うのですが、技術的な面ですね。「基盤的情報処理論」は本当に苦しかったです。でも、その時は熊本にいたので、学生研究 室に行って、熊本在住の同期の学生やGSISの研究員の方をつかまえて教えてもらいました。熊大から遠く離れた場所で同じくIT科目に苦戦した同期のメン バーは、メールで先生方に質問したり、オフィスアワーや合宿など直接先生方にお会いできる機会を利用したりして進めていたようです。IT系の選択科目は取 らなかったんですけれど、基盤的科目のほか「学習支援情報通信システム論」をはじめ最低限の必修科目でここまで何とかなりました。

– 同期とのコミュニケーションは、科目の掲示板上がメインですか?

インフォーマルな部分はFacebookですね。私たちの同期は、入学時から18人全員がFacebookでグループを作って情報交換をしていました。課 題の進み具合の確認もありましたし、科目上のチームとは別にお互いの課題についてコメントをし合ったり、近況報告したりもしました。ここ2~3週間は修論 発表会について情報が飛び交っていました。Facebookに投げれば誰かが答えてくれるかな、というのはあります。東京の方は実際に集合して勉強会や食 事会など開催していたみたいですよ。

– 1番の収穫はなんですか?

そうですね。これまでお話したとおり、IDに興味を持ってIDを学べたことも、ITの技術的なことも収穫ですが、私にとって修士の学位が取れたことも今後 の仕事の選択肢を増やす上で大きかったです。例えば、GSIS修了後はウクライナへ行くんですが、この公募は見込みも含めて修士号がなければ応募できませ んでした。また、国内外問わずITリテラシーを求める公募を見かけるようになりました。日本語教育では業務内容によって遠隔地の学習者にオンラインで教え る機会もありますし、さまざまな日本語eラーニング教材の開発も進んでいます。これから日本語教育において、eラーニングに関する知識を持つ教師のニーズ がさらに高まるのではないかと思います。 日本語教師として何年か経験を積み、業務で何か課題を抱えている方や「授業をよりよくするには?」と日々改善を試みている方、キャリアアップのため進学を 検討している方にもGSISの存在を知ってほしいと思います。

– 入学を考えている人にメッセージをお願いします

本当に苦しいときもありましたが、私自身は入って良かったと思っています。口で説明するよりも、ぜひ体験していただきたいです。そして、入学後はパソコン と向かい合う時間に加えて、合宿や熊大ナイトで先生方や学びの仲間と熱い時間を過ごしてほしいです。一緒に楽しく激しく学びましょう!

注1:鈴木克明(2002)「教材設計マニュアル―独学を支援するために」北大路書房
注2:国際交流基金(2008)「日本語教授法シリーズ14 教材開発」ひつじ書房

(2014年2月インタビュー)

※ 登場している方々のご所属および本専攻のカリキュラムや科目に関する記述は、インタビュー当時のものです。

 

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