鈴木克明(2003)「情報メディアを活用した学校経営ビジョンと工夫」(3章6)木岡一明(編)『学校を取り巻く環境の把握と地域協働』


情報メディアを活用した学校経営ビジョンと工夫


岩手県立大学ソフトウェア情報学部教授 鈴木克明



1.基本的視点

学校経営に有用な情報メディアとして、インターネットを利用した学校ホームページや電子メール、メーリングリスト、メールマガジン等の活用を工夫する。それと同時に、これまでも活用されてきた情報メディアとして、学校案内や研究紀要などの出版物や、学校だより、学級通信、PTA便りなどの印刷物やパンフレットの収集・整備や電子化も視野に入れる。さらに、学校開放行事や講演会の企画、あるいは、校内に招聘する講師などの人材登録バンクや児童・生徒の校外活動の場としての協力施設・協力者リストなども含めて、学校経営を活性化するために活用できるあらゆる『情報』の整理と活用支援システムを整備することが肝要である。

情報メディアを活用する工夫を考えるときに持つべき視点の一つとして、今までの情報を整理する縦断的なアプローチが必要となる。過去の歴史を掘り起こし、これまでの学校経営の経過を確認するとともに、現在・将来に活用できる形に整備する工夫が求められる。デジタル化することで、過去の情報は現在によみがえる。現在進行形の様々な活動も、デジタル化することで、将来への保存が簡便に図られる。

情報メディア活用の工夫によって、現在の活動を校内で共有するという横断的なアプローチが可能である。これが、第2の視点となる。校内に整備されているネットワークの利活用を工夫することで、情報の共有で無駄を省く。教員一人ひとりが日々の情報を互いに共通財産として互いに利用しあう。これまでは個々の教員の努力と工夫に個別に依存していた教育活動が全体として高まる可能性がある。上記の2点は、校内だけに留まらず、地域との関係においても十分な効果が期待される。


2.チェックポイント

<広報>
<教科指導・生徒指導>
<校務・情報伝達の効率化>
<地域協働>



3.チェックポイントの使い方と留意点

<広報>

学校ホームページは、情報社会の「学校の顔」として重要な意味を持っている。関心がある者は、いつでも、どこからでも学校ホームページを参照できる。全国の家庭の半数以上がインターネットにアクセスし、日常的にホームページを閲覧している昨今の状況を考えれば、学校としてどんな情報をどのように発信していくかをしっかり検討したい。

ホームページは、学校からの情報を提供するための大切な情報メディアである。できるだけ新鮮な情報を、画像を交えて分かりやすく伝えていく。学校ホームページは存在するが、中身は作成時とあまり変化していない、という状況は、「この学校はホームページを重視していない」というメッセージを閲覧者に伝える。一方で、行事などのあとではすぐに写真入りで報告が紹介されるという評判が立てば、更新を楽しみにする人が増える。学校との親近感を高めるのに役立つことが期待できる。

また、学校ホームページは、学校からの情報提供ばかりではなく、学校への要望を表明してもらう場所としても、あるいは、学校関係者の情報交換の場としても活用することが考えられる。PTAのコーナーや卒業生・同窓会のコーナーを設けて、活発に活動を展開している例もある。人材登録コーナーを設けて、ボランティアを募っている例もある。一方的な情報提供に留まらずに、情報収集や情報交換の場として提供する場合、管理者を定め、不適切な「乱用」がないかどうかを常に点検するとともに、「しっかりと対応してくれる」という印象を与えるように配慮することが肝要である。

<校務・情報伝達の効率化>

学校で日々作成される書類の量は少なくない。しかも、毎年、あるいは毎学期同じような書式で、再生産される書類も多い。校内ネットワークが整備されたら、ネットワーク上にいわゆる「共有ハードディスク」または「ファイルサーバ」を設置し、すべての書類をそこに整理して置くことで効率化を図るとよい。校務分掌ごと、学年・教科ごとにフォルダを置き、その中に書式や作成した文書の複製などを整理して保存する。この効果は、すぐには目立たなくても、次の学期、次の年度に労は報われる。

教員全員が電子メールアドレスを持つようになったら、各種の通達は電子メールで行うようにし、情報伝達の効率化を図るのがよい。電子メールは口頭での伝達と異なり「いつ誰が何を伝達したか」が記録として残る。また、過去の電子メールをいつでも参照することができる点が便利である。1通の電子メールが全教員、あるいは教科ごとや学年ごとの所属全教員に一回の送信で届くようにするために、メーリングリストを作って活用する。

<縦断的なアプローチ>

歴史のある学校ほど、これまでに蓄積された情報は多岐にわたって存在する。一方で、明日の活動のために過去の情報が「すぐに使える形」で整備されずに、埋もれている事例が多く見られる。過去を掘り起こし、これまでの学校経営の経過を確認するとともに、現在・将来に活用できる形に整備する工夫が求められる。デジタル化することで、過去の情報は現在によみがえらせることが肝要である。 たとえば、小学校であれば、入学時からの記録を掘り起こして卒業時にまとめて渡すことも、デジタル化によって容易にできる。しかも、複製が簡単に、しかも劣化しない形でできるため、学校としての保存も可能である。現在進行形の様々な活動も、デジタル化することで、将来への保存が簡便に図られる。まずは現在進行形の情報をいかに将来に残すためにデジタル化して保存するかを考え、次に、過去の情報をデジタル化する作業に着手するとよい。現在の活動活動成果をまず広く周知させ、次に歴史を整理する。

<横断的アプローチ>

情報メディア活用の工夫によって、現在の活動を校内で共有する。一つの学校で日常的に行われていることに、どれだけ「繰り返し」が多いかを考えたときに、情報が共有できれば省くことができる無駄が少なくないことに気づく。複製が簡単にできるデジタル情報の特性を活かし、校内に整備されているネットワークの利活用を工夫することで、情報の共有で無駄を省く。 また、各教室で教員一人ひとりが何をやっているのかを把握し、互いに共通財産として活用できる情報を流通させる工夫も効果が期待されよう。いわゆる「学級王国の壁」を取り外し、お互いが刺激を受け合う情報環境をつくることで、これまでは個々の教員の努力と工夫に個別に依存していた教育活動が学校全体として高めていくのが良い。