HyperCardを使った教育用スタックの作り方—大学教員のための実践的教材設計入門—東北学院大学教養学部 鈴木克明・佐伯啓


1. 教材の中身を考える — 教材のアイディアと素材の吟味

 「教育ソフト」と一口に言っても、色々なタイプのものが考えられる。課外時間に一人で取り組むものもあれば、授業中に使うものもある。教師が講義の導入に使うものもあれば、仕上げに使うものもある。まず、どんな教材を作るかイメージすることから始めよう。

 コンピュータの特性を生かせる教材として思いつくものをいくつか挙げてみると、だいたい次のようなものが考えられる。

■ データベース型教材

 ある学問分野に関する基本文献や研究資料をそっくりそのまま電子化して、キーワード検索などで学生に情報収集をさせる教材。テキスト情報だけでなく、たとえばこれまでに収集した写真データをカタログ化して引き出せるようにするといった、マルチメディア型教材も考えられる。膨大な情報を整理して提示するために有効である。

■ シミュレーション型教材

 現実には不可能な観測やその予備実験を行なうための教材。たとえば、物理法則の理解を助けるためにコンピュータ上で物体の動きを計算させて示すもの。あるいは心理実験をやる前に、その方法を図示して疑似体験させる教材等。

■ 練習ドリル型教材

 教師の一方的な講義だけでは不足しがちな練習を補うための教材。たとえば、語学で単語の練習をさせたり、習った文法事項を復習させたりするための教材。講義で扱った知識の定着をはかるために有効である。講義の前に、基本的な知識を与えたり思い出させたりするといった使い方も考えられる。

 教育メディアとしてのコンピュータの特長は、何といってもインタラクティビティ、つまり相互作用性にあるといってよい。この特長は、情報が一方的に与えられるだけで、受け手の意志とは無関係に番組が進行するテレビの場合と比較すると、より一層明らかである。たとえばマルチメディアの技術を駆使した語学教材をコンピュータ上で実現させたとしても、音声や映像が画面に次々と表示されるだけでは、テレビやビデオと何ら変わるものではない。使う側の選択に応じてカスタマイズされた情報が、いつでも自由に引き出せるような機能が必要である。入力した数値にしたがってシミュレーションが実行される、あるいは、理解度に応じて練習問題の難易度が変化するといった機能こそ、テレビやビデオにはないコンピュータだけの特長である。どうせ教材ソフトを作るのならば、できるだけ相互作用性を生かした教材作りを心がけたい。

 また、教師がソフトを自作する場合、教材の内容となる基本的素材はすでにある程度準備されているわけだが、それらの素材(専門知識)のうち、どのぐらいの情報量をどのように配列し提示するかということの吟味には、十分な時間をかけるべきである。

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