『現代学校教育大事典』ぎょうせい、分担執筆(項目:静止画放送) 脱稿:2001.8.19.

■静止画放送 still picture broadcasting

◆定義 1こま1こまの静止画(文字、イラスト、スチル写真など)と音声によって 構成される番組をテレビ電波で送る放送のこと。のちに,静止画だけで構成される情 報をテレビで受信できるように提供するデータ放送の意味でも用いられるようになっ た。ホテル内での情報チャンネルや、ケーブルテレビチャンネルでの地域限定コマー シャルなどに応用されている例がある。

◆仕組み テレビから送られてくる動画像は毎秒30フレームの連続した静止画像から 構成され、人の目の残像現象を利用して「動き」を感じさせている。その動画像のか わりに、異なる静止画像を同時に放送することで通常の電波帯域で複数の番組を放送 しようとした。静止画専用のチャンネルで音声に画像の2倍のフレームを割り当てて 毎秒10画面ずつ送る例や、デジタル方式では音声と画像をそれぞれ7秒あたりに20画 面と20チャンネル送る規格がある。受信した静止画は受信機のフレームメモリに記憶 させ、これを繰り返し再生してテレビ画面に表示させる。

◆関連技術 静止画放送は、専用のチャンネルでの放送の他、放送に利用している電 波のすき間を利用して、本来の放送とは別の信号を送って情報を提供するシステム( 多重放送と言う)での提供も進められている。多重放送には、静止画放送のほかにも 、二カ国語放送やステレオ放送などの音声多重放送や文字放送、ファクシミリ放送が ある。日本では、音声、画像、文字、図形などすべての情報をデジタル化して一つの 電波で放送する新しい放送形態が統合デジタル放送(ISDB)として2000年に実現した が、そのルーツにはそれまで積み上げてきた静止画放送の研究があったと言われてい る。    <鈴木克明>

[参考文献]

映像情報メディア学会編『テレビジョン・画像情報工学ハンドブック』オーム社,1990