鈴木克明(1989)「米国における授業設計モデル研究の動向」『日本教育工学雑誌』13(1),1-14


米国における授業設計モデル研究の動向

鈴木克明
Katsuaki SUZUKI
東北学院大学


要約
 本稿は,これまでに発表された多数のモデルや理論的裏付けを整理して,米国の投業設計研究の動向をまとめ,以下の諸点について概観し,考察を試みたものである.(1)現存するモデルの多くは,設計手順は共通であるが理論的根拠や利用効果に相違が見られる.(2)授業設計モデルを支えるべき教授理論には,REIGELUTHの業績等により,統合化への動きが見られる.(3)記述的対処方的理論,授業設計と開発,マイクロ対マクロ設計,成果としての魅力,スキーマ等の概念が整理されている.(4)モデルへの体系化を踏まえた多岐に渡る質の高い教授方略の効果研究が求められている.(5)モデ ル構築にはGAGNEの9状況(事象)・5分類の枠組や折衷主義に基づくモデルの強化が提唱され,学習集団の影響や動機づけ等へのシステム的な研究も見られる.(6)モデルの理論武装に並行して,モデル使用能力の養成や使い勝手の向上等の技法研究も進められている.

キーワード:授業設計,教授理論,授業モデル,教授方略,システム的アプローチ


1.はじめに

 米国での授業設計モデルの研究は,プログラム学習教 材の設計開発をめぐって盛んになって以来,実際の問題 解決の手段として生み出された多種多様なモデルを整理 するという課題に直面している.たとえば,教授理論を 実現するためのモデル(GAGNE and BRIGGS 1979),軍 事訓練を最適化するモデル(BRANSON 1978),CAIコ ースウェア設計のモデル(MERRILL 1980,1988),授業 設計者を養成するためのモデル(DICK and CAREY, 1985)等,さまざまなモデルがこれまでに発表されてき た.授業設計のモデルには,授業状況を支配するおもな 変数と教授方略との関係が示され,より効果的な授業を 設計開発するための手順が明らかにされていることが要 求される.したがって,利用者が直面する問題を解決す るためにはどのモデルによってどの程度の効果を期待で きるかを明らかにし,モデルそのものを評価する枠組を 確立する必要がある.モデルの評価には,モデルのより どころである理論的な根拠を考察することが不可欠であ るが,応用性の見地からモデルを評価することで,研究 に値する次なる課題を模索しようとする実践的なアプロ ーチも多くみられる.

 もう一つの課題として,関連分野の研究をいかに取り 入れていくかが問われている.授業が何らかの学習を助 長サることを目指すならば,学習や記憶のメカニズム, 学習課題や学習者の特性,あるいは,学習環境の特質等 を説明しようとする理論的研究の所産を反映するのが得 策である.心理学における「バラダイム変換(菅井 1983)」を反映して,さまざまな立場から学習に関連す る理論が提唱されており,学習指導の場面にどの研究成 果をどのように応用していくかが検討されている.また, これまでは不可能だった種類の研究のために,技術革新 の成果や研究技法の進歩を取り入れ,新しいタイプの研 究も次々に始められている.

 本稿では,まず,この転換期にある米国における授業 設計モデルの研究を整理する前段として,現在の授業設 計モデルの特徴を眺め,その背後にある(またはモデル に反映されているべき)教授理論の研究を概観する.次 に,本論として,授業設計モデルに関する研究の動向を, 観念の整理,教授方略の研究,モデルヘの体系化,モデ ル応用の技法研究の四つに便宜的に分けて考察したい. なお,本稿は著者の4年間にわたる米国フロリダ州立大 学滞在中の研究に基づいてまとめられたことを付記して おく.


2.授業設計モデルの現況

 典型的な授業設計のモデルは,授業やカリキュラムに 取り上げるべき学習目標を選択・順序だてするためのニ ーズ分析に始まり,学習課題の分析,目標準拠テストの 開発,教授メディアの選択,教授方略の選択,形成的評 価と教材・教案の改善等の授業設計開発の諸段階での方 法論を解説する.具体的な手順や注意事項に至るまで詳 細に,授業設計のノウハウが説明されており,学習指導 システムや授業をシステム的に作り出す場面で問題解決 の道具として用いられている.

 代表的なモデルとしては,GAGNE and BRIGGS(1979) によるもの,DICK and CAREY(1985)によるもの等が 広く知られている(BRADEN and SACHS 1983). GAGNE and BRIGGS のモデルは,五つの学習成果と九 つの授業状況を柱とするGAGNE(1985)の教授理論に 基づいて,授業を設計するための原理と手続きを解説し たものである.現存するモデルのなかでも最も歴史があ り,広範囲に応用できるものとして評砥が高く(HAERTEL et al.1983,REIGLUTH1983,1987),他のモデルの基盤としても使われている(REIGELUTH and CURTIS 1987).一方,DICK and CAREYのモデルは, ニーズ分析の段階を省き,与えられた学習目標を達成す るために授業を設計するもので,また,システム的アプ ローチの要である形成的評価の実際に詳しく,実践家や 入門期向きのモデルといえよう(鈴木 1987a 参照).授 業設計モデルに共通して見られるステップについては, 中野(1982)にまとめられている.

 授業の設計開発をどのような手順で行うかについては 大まかな一致が見られるものの,それぞれのモデルの応 用可能範囲やその効果については,検討を続ける必要が ある.REID(1984)ほ,授業設計開発段階の流れについ ては過去10〜15年間に著しい変化はないものの,各段 階で用いられる方法は流動的であると指摘している.授 業設計モデルは,つねに最新の理論や研究成果に基づき, 論理的思考,経験則,そして不断の再考によって補われ るものでなければならない(McCOMBS 1986).したが って,理論の展開や研究成果を受けて,つねにモデルの 中身を見直す事が要求される.モデルに提唱されている 手順はどのような理論的な裏付けをもって効果的と仮定 されるのか,そして,どのような授業設計の事例に実際 に効果的であったか等が確認され続けなければならない のである.

 授業設計モデルを批判的な立場から整理するために, ANDREWS and GOODSON(1980)はモデル評価の枠組 を提案し,これまでに発表された40種に及ぶ授業設計 モデルを比較検討した.その際の評価の枠組は,おおよ そ次のとおりであった.

(1)モデルの起源:モデルの特徴や限界を知らせるた めに,モデルそのものがどのように開発されたのかを明 示しているかどうかを確認した.モデルの起源にほ,理 論的な側面(一般システム理論と学習理論を含む)と経 験的な側面があるが,南方の起滞を明らかにしているの を理想とした.

(2)理論的な裏付け:学習理論,システム理論の統制 機能,システム理論の分析機能の3点をどの程度活用し ているかを検討した.

(3)目的と用途:授業設計を教えるため,さまざまな 授業・教材を開発するため(公式,非公式,小規模,大 規模),教育のコストを減らすため,の三つの目的に対 する適応性を評価した.

(4)モデル使用の実績:モデルを使った事例での効果 についての情報を評価した.モデル全体の効果とモデル に含まれる部分的な手法の効果についての情報が検討さ れた.

 ANDREWS and GOODSON(1980)のまとめによると, 現在の授業設計モデルの特徴は次のとおりである.

 1.40の投業設計開発モデルに含まれる作業の手順 は共通しているものが多く,作業のステップについては応用場面の差を超越して一般化に耐えうるものである.

 2.学習理論の裏付けに乏しいモデルが多い.

 3.モデル使用の業績が明示されておらず,モデルの効果を評価しにくいものが多い.

 4.システム的というよりもむしろ機械的で直線的なステップの羅列といえるモデルが多い.

 新しいモデルとして発表されてきたものの多くは直面 する学習指導システムや教材の開発といった課題を達成 するために既存のモデルの応用を十分に吟味することな く開発されてきたいわば粗製乱造型のモデルである,と いう実状を反映するものと見ることができよう.理論的 根拠もあいまいで利用効果の不確かなモデルが多く存 在する現状は,教育実践家にとって不利益であると ANDREWS and GOODSONは結んでいる.

 次に,BRIGGS(1982)が現在の授業設計モデルの長 所・短所をどう見ていたかを簡単に紹介する.いうまで もないが,BRIGGSは授業設計開発の研究で草分け的存 在であり(BRIGGS 1980),GAGNE-BRIGGSの教授理 論で貢献のあった研究者である.まず,長所として次の 6点を挙げた,

 1.理論を実際的な判断で補う形でモデルが作られており,内的に矛盾がない.

 2.学習成果の分数(GAGN丘1985)を枠組としてモデルが構築されており,目標,授業,評価の関係に整合性を保つことができる.

 3.より複雑なモデル(たとえば BRIGGS and WAGER 1981)をより簡潔なモデル(たとえば DICK and CAREY 1985)の基礎として応用できる.

 4,汎用性の高い技法が確立されている.(例:課題分析,形成的評価)

 5.モデルの評価機能に重点が置かれ,実証的である.

 6.モデル使用の実践から生じる課題がモデル研究を方向づけている.

 一方,短所としては,次の6点を指摘している.

 1.知的技能,知識,運動技能の領域に比べて,態度,認知的方略,対人技能,既得の習慣を捨てさせる方法等の分野が貧弱である.

 2.学習課題の分析に比べて,学習者の特性を分析した所見が少ない.

 3.処遇よりも学習効果により強い影響を与えると考えられる因子(動機づけや学習能力)に対する配慮が乏しい.

 4.個別学習の教材に比べて,教師の役割や学習集団の影響に閑する分析が弱い.

 5.システム的モデル以外のモデルからの所産を十分生かしていない.

 6.日々の学習活動が長期的な教育目的にどのように関連しているのかを明らかにしていない.

 授業設計モデルに関する研究は,ここに指摘された現 在のモデルの長所を延ばし,短所を克服するための研究 としてとらえることも可能であろう.次に,最近の授業 設計モデルに関する研究の動向をみる前に,理論的根拠 を提供する教投理論の発展について槻観する.


3.授業設計モデルを支える教授理論の発展

 授業設計を研究領域として確立し,学習指導に関する 理論の構築やモデルの開発を導いたのは,プログラム学 習のSKINNER(1954),発見学習のBRUNER(1966), そして,有意味受容学習のAUSUBEL(1968)の業績が 大きいとされている(REIGELUTH 1983).それぞれの 立場から学習に関する理論を授業に活用するためのモデ ルを示し,授業を科学的研究の対象として確立したこと が評価されている.初期において貢献が特筆されるべき その他の研究者としては,当時の研究所産をまとめて授 業の心理学を確立するための四つの要素(目標分析,開 始時の状態,教授方略,達成の評価)を示したGLASER (1976),学習ヒエラルキー(階層)分析などの研究から 授業設計モデルを開発したGAGNE(1968)などが挙げ られている.これらの学習心理学的な基盤とBANATHY (1968)に代表されるシステム的アプローチが融合して, 授業設計モデルの開発を支えて来たのである.

 以来約20年にわたって,授業設計の基確である教授 理論の充実のための研究が行われ,また,さまざまな隣 接領域の研究所産が取り入れられて,授業設計モデルが 形成されてきた.行動主義的な学習理論に始まり,シス テム理論,コミニュケーショソ理論,動機づけ理論,さ らには,情報処理理論,人工知能,スキーマ理論,包摂 (sulbsumption)理論,記憶構造などの認知科学の諸理論 等,広範囲からの影響を受けてきている(REIGELUTH 1984).一方で,教授理論の探求そのものを主たる研究 の対象として,広範囲の研究成果を取り入れながら, できる限り少ない数の特徴で授業をとらえる教授理論 を構築しようとする研究者の活躍が近年めざましい. SNELBECKER(1983)は,1950〜60年代からの伝統を 踏襲しながらも,より高度で詳細に渡る教授理論が,た んに他の領域の研究成果をそのまま応用するのみならず, 教授理論の構築を主限とした研究や実践に裏付けられて 確立されてきたと評価している.このような教授理論の 発展によって,より強力な教授方略を授業設計モデルの 中で用いることが可能になってきたのである.

 REIGELUTH(1983,1987)は,現在授業設計モデルの 基盤となりうる教授理論のおもなものとして次の八つを 取り上げた(より広範囲なまとめとしては,GANGE and DICK 1983,JOYCE and WEIL 1986,SNELBECKER 1974を参照).
(1)GAGNE・BRIGGSの教授理論
(2)GROPPERの行動主義的アプローチ
(3)LANDAのAlgo-Heuristic 理論
(4)SCANDURAの構造学習理論
(5)COLLINSの問合せ学習理論
(6)MERRILLの画面構成理論(CDT)
(7)REIGELUTHの精緻化(Elaboration)理論
(8)KELLERの動機づけ理論(ARCSモデル)
 これまでは,それぞれの研究者たちが独自に理論構築 を目指す研究を進めていたが,REIGELUTHが1983年 に編集,発表した Instructional-design Models and Theories: An Overview of their Current Status によって代表的な理論が比較・評価の土俵に乗せられ, 概念の枠組が再検討され,さらに,教授理論の統合への 第一歩が記された.その後,教授理論の統合を目指す研 究が活発になってきている(MARTIN and DRISCOLL 1984,REIGELUTH 1984,1987).REIGELUTH(1987) は前掲書の実践編であり,一つの学習内容(レンズと顕 微鏡の仕組み)について,八つの教授理論(前掲)に従 って書かれた指導案が,理論の概略と指導案へのコメン トとともに収められている.それぞれの理論を理解し, 比較・検討を助けるために編集者の REIGELUTH が両 書に施した脚注は特筆に値するものである.

 教授理論の統合化の動きは,授業設計モデルの開発・ 乱立に先行され,問題解決手法であるモデルの理論的根 拠を提供することが急務であるという認識のもとに最近 になってようやく本格的になったといえよう.したがっ て,これまでに開発・利用されてきた授業設計モデルが 必ずしも理論的な裏付けを十分に備えているわけではな いことは前節で見たとおりである.また,教授理論それ ぞれに特有の用語が使われている場合も多く,さらに理 論への考慮が欠けるモデルも数多く見られるといった現 状である.一方で,教授理論の統合化への動きも活発に なり,教授理論と表裏一体になって進められている授業 設計モデル研究も多く見られる.次に,授業設計モデル に関する研究の動向について詳しい考察を試みる.


4.授業設計モデル研究の動向

 4.1.モデル研究のタイプ化

 授業設計モデルを対象にした研究の動向を考察するに あたって,幾つかの便宜的なタイプを仮に設けたい.こ こではREIGELUTH and MERRILL(1978)の「授業方 法を改善する知見を得るためのステップ」を参考にす る.

 まず,授業設計モデル研究の基擬となる第1のステッ プとして,授業に関する諸概念を定義することが挙げら れている.板念の規定には,授業過程の因果関係を示唆 する度合いと安定性が検討事項とされている.次に,授 業の原理(つまり教授方略)を仮説立て,検証するステ ップがある.これは,変数一つか多くても交互作用をも つ2,3の変数を抽出して行う実験室的な研究である.第 3のステップでは,実際的な場面での応用研究によって, 複数の教授方略を理論やモデルに体系化する.これは, 方略そのものの良し悪しを決定するという観点からより もむしろある学習成果や学習条件について方略の最適化 を図る方向で進められる.これらの科学的な見地からの 研究に加えて,実践に応用する手順を開発・改善するた めの技法レベルの研究が最後のステップとされている.

 ここでは,これらのステップをモデル研究が踏むべき 順序としてとらえずに,むしろ,力点の異なる研究を便 宜的にタイプ化する手段として用いたい.それは,たと えば,不完全な理論を技法レベルの研究の成果が補う働 きをすることがしばしばある(前出の BRIGGS 長所6) ことに着目したいからである.概念を明確にする作業, 教授方略を提起する作業,モデルヘと体系化する作業, 問題解決の場面でモデルを使いやすいものにする作業等 がバランスを取りながら進められるのが望ましいと思わ れる.

 4.2.諸拇念の明確化

 授業設計をめぐる諸概念の明確化を象徽するものとし ては,米国教育コミニュケーショソ・工学会によるまと めがある(AECT 1977,1979).ひとつひとつの概念を 規定するのみならず,教育工学の関心領域の幅を示唆す るものとして,日本における東他編(1979)「新教育の事 典」に似た働きをしている.

 これまでも取り上げられてきた事項を再検討もしくは 拡大する意味で最近関心が集まっている概念としては, 記述的(descriptive)理論に対する処方的(prescriptive) 理論,授業設計(instructional design)と授業開発(instructional development)の区別,マイクロ設計とマクロ設計の区別,授業設計の成果としての効果(effect)・ 効率(effciency)・魅力(appeal)などがある(REIGELUTH 1983).
 授業設計モデルがある目的を達成するための問題解決 手段として用いられるためには,記述的理論ではなく, 処方的理論に基づいていなければならない(図1参照).

記述的理論では,「条件AのもとにBの方法をとれば, Cの結果がでる」のような事実関係が示される.この場 合,条件と方法が独立変数で,それによって左右される 結果が従属変数である.このタイプの理論では,Cの結 果に至るためにBの方法が最善かどうかは不明である. 条件AでCの結果を得るには別の方法(たとえばⅩ)の ほうがより好ましいかもしれないからである.これに対 して処方的理論は,「条件PのもとにQの結果を出すに はRの方法が最適である」のような提言をする.つまり 条件と結果を規定して,方法を従属させることになる (GLASER1976,REIGELUTH1983)・授業設計モデル をめぐる研究を処方的理論の観点からつねに見直し,よ りよい方法が提言できるときにはRの方法をSに,さら にはTへと置き換え,モデルを強化すべきであるという 立場である.

 授業設計という用語には従来設計の理論的枠組と設 計・開発作業の手順が包含されているが,教授理論を応 用して授業やカリキュラム構成の青写真を作成する「設 計」の側面と,システム工学を応用して作業の手続きを 示す「開発」の側面を区別する事が提唱されている(REIGELUTH 1983).これまでに授 業設計モデルとして発表されたものの多くは「開発」の手順の説明に終始し,「設 計」の基盤となる理論的板拠を持たない傾向があること はANDREWS and GOODSON(1980)のまとめのとお りである.一方で,教授理論の研究対象となっているの は,授業の青写真を最適化するための規定因子の探求で あり,そのための学習課題の明確化,評価技法の確立, あるいは学習者要困の分析等に限定されている.REIGELUTH(1983,1987)の挙げた八つの教授理論にたとえばDICK and CAREY(1985)のモデルが含まれていない のは,DICK−CAREYモデルが「開発」の手順に力点を 履き,「設計」の基盤にはGAGNE−BRIGGS の教授理論 を用いているためである.また,GAGN云・BRIGGS理論 の最新書にほ,逆にDICK−CAREYモデルが開発手順と して採用されており,相補的な関係がみられる(GAGNE et al.1988).REIGELUTH(1983)は「設計」や「開 発」に並列の観念として「実施」,「管理」,「評価」を挙 げているが(p.6〜11),本稿では,それらを包含する意 味で,授業設計モデルをとらえることにする.

 マイクロ設計では一つの学習目標を達成するために授 業あるいは単元をどう構成するのが最適かを扱い,マク ロ設計では複数の学習目標をどのように組み立て,順序 づけるかを扱う.たとえば,MERRILL(1980,1988)が 米国を代表するCAIシステムの一つであるTICCIT のコースウェア設計の際にモデル化した画面構成理論 (CDT)は,一つの学習目標を達成するコースウェアに はどんな性質の画面(一般化された法則,例示,演習問 題)が必要で,どのタイプの補助画面(ヒント,レベル 変化,助言等)が効果的かを示した(マイクロ設計). その後,REIGELUTHが体系化した精緻化理論(REGELUTH 1984,REIGELUTH and MERRILL1978, REIGELUTH and STEIN 1983)は,CDTをマイクロ 設計に用い,カリキュラムを構成するためのコースウェ アの構造化方略をモデル化したものである(マクロ設計) 授業設計モデルの研究で用いられる「授業(instruction)」 という用語はたんに学位での一単位時間を示すものでは なく,より広い意味で「授業とは学習を援助する営みで ある(中野1982)」との視点に立っており,マイクロ・ マクロの両面を含むことに注意したい.

 マイクロ・マクロの区別は,これまでの研究が短期的 な教授活動の設計に偏っており,BRIGGSが指摘したよ うに(前述の短所6)システム的に設計されたある活動 が他の活動や長期目標に与える影響についての研究が急 務であることを示唆するものとしても意味があると思わ れる.また,たとえば,GAGNE-BRIGGS(1979)の教授 理論で,授業設計を一単位時間の投業や単元の短期(マ イクロ)とカリキュラムや年次計画の長期(マクロ)に 分け,それぞれが性質の異なる作業であるとしているこ とに通じる分類である.これまで長年に渡って研究され てきた教材あるいは授業状況の系列化,シーケンスの研 究をマイクロ・マクロの分類の観点から整理して区分け の有効性を示変したものとして,PATTEN et al.(1986) の評論が挙げられる.

 授業設計の成果としての魅力という観念は,前出の REIGELUTH and MERRILL(1978)が提唱したもので ある.これは,BLOOM(1976)の学夜学習モデル(図 2)における「情意的成果」の一つとしてとらえられ, MAEHR(1976)の「持続している動機づけ(continuing motivation)」の尺度等で測定可能であると思われる. つまり,設計された授業によって,学習目標が達成され たかどうか(効果),また,学習者・授業設計者双方の 立場から授業が無駄なく営まれたかどうか(効率)とい う評価の視点に加えて,学習内容や授業そのものがどの 程度魅力的で,「もっとやりたい」という気持ちを抱か せたかどうかを押さえるのが重要であるという考え方で ある.この視点は「動機づけ設計(motivational design; KELLER 1983)」と呼ばれる研究領域に発展しつつあり (後述),情報処理理論に基づき能動的な情報処理者とし て学習者をとらえて学習者の動機づけを重視する立場 (SHUELL 1986,WILDMAN and BURTON1981)に呼 応するものである.



 一方,関連分野の研究所産を取り入れる意味で関心 が高まっている概念には,スキーマ(シェマ)理論 (Schema Theory)に基づく記憶のメカニズムがある (GAGN色1986,GAGN云 and DICK1983).スキーマ とはある概念を中心として相互に結合した知識の塊とし て理論的に佼定された記憶の単位である.一つのスキー マには,中心となる観念に関する知識のみならず,その 観念の使い方,他のスキーマとの関連等の知識が含まれ ている.さらに,新しく接する情報を整理して受容する だけでなく,不足する情報を補ったり,学習者のもつス キーマに適合するように解釈を加えて新しい情報を処理 する機能もあるとされている(ANDERSON1984).

 スキーマ理論の授業設計モデル研究への影響は大きい. 授業が学習を促進する営みであるということは,学習者 の記憶になんらかの変化をもたらすことを意味する.し たがって,もし記憶の単位がスキーマであるならほ,そ の特質を生かした学習指導がありうるはずである.たと えば,学習を授業開始時の記憶構造から目指す記憶構造 への変化ととらえてその変化を促すために教授方略を最 適化するといったようなアプローチも無視できない.授 業設計モデルで仮定されている学習成果(GAGNE 1985) とスキーマ研究者が提案している学習のメカニズム(た とえばRUMELHART and NORMAN 1978)とを比較 してみるのも興味深い(SUZUKI 1987a).スキーマ理 論は授業設計モデルの現在の学習心理学的基盤である情 報処理理論の説明カを強める形で適応可能であり,人工 知能研究等の所産が授業設計に応用でき得る程度に具体 的に示されつつあるのも魅力材料である.スキーマ理論 を授業設計に応用する方法は,授業設計に携わる研究者 の間でも多岐に渡って議論されている(GAGNE et al. 1988,WAGER 1987).

 4.3.教授方時の探究・検証を目指す研究

 授業設計に関する研究の最も基礎的な単位として挙げ られるのが教授方略の研究である.いつでもどこでも通 用するいわば万絶薬的な軽業方法を求める代りに,より 細かな授業方法の単位としての教授方略の効果が問われ るようになった(REIGELUTH and CURTIS 1987).初 期の研究としては,EVANS ら(EVANS et al.1962) のルーレグ法や,プログラム学習におけるオパートな反 応や強化の研究がある.この種の研究成果をまとめたも のとしては知覚,記憶,観念学習,態度変容の領域で計 193の原理を集大成した FLEMING and LEVIE(1978) によるものおよび FLEMING(1987)による最近の45の 一般化がある.それは,AOTBE(All 0ther things being equal;FLEMING and LEVIE 1978,P.5)に表される ように,同じ条件の下にある変数のみを変えてその操作 の効果を測定することを目的とした,いわゆる実験室的 な研究の成果のまとめである.

 現在においてもこのタイプの基本的研究の重要性は変 わらない.一つの学習目標を扱う授業の構成を最適化す るためのマイクロ設計のレベルでの研究課題としては, 先行オーガナイザー等の「情報提示前の処遇」の処方, 画像や質問,矯正的フィードバック,ヒント等の「挿 入」の影響,図表化,反復,構造化等の情報の「精緻化 (elaboration)」の問題,あるいは「学習情報そのもの」 の種類,量,順序といった課題が挙げられる(GAGNE 1986).マクロ設計のレベルでは,長期的な学習目標を 組み入れた授業設計の方法(MARTIN and BRIGGS 1986),異なるタイプの関連学習成果の相互作用(domain interaction;BRIGGS and WAGER 1981,SUZUKI 1987c)を考慮した授業設計の手法,学習内容の構造化 と定着を狙う「学習のまとめ」の種類(Summarizers お よび Synthesizers;REIGELUTH and STEIN 1983), 時間,内容,頻度,あるいは順序性や系列化の問題 (PATTEN et al.1986)等がある.さらに,管理面の方 略として,学習のペース,内容,順序,難易度,教授方 略の選択等の「学習者制御」の問題,単元の構造,難易 度,達成状況などの学習の貌状に関する「メタ情報」を 与えるかどうかの問題,学習意欲を高めるための組織的 な「動機づけ方略(KELLER 1983)」の量や時間,種類 の問題などが挙げられよう.

 教授方略に関する研究を行ったり研究成果をまとめる 際には,理論的根拠を的確に押さえ,ある教授方略が効 果的である条件を明らかにすることが肝要である.たと えば,MARTIN and BRIGGS(1986,第14章)は, GAGNE(1985)の学習の外的条件の整備という視点に従 い,教授方略の研究成果を計230の外的条件として,認 知・情意領域の各学習成果ごとに一般化した.これは, 最適な学習の条件が学習成果のカテゴリーによって異な るという GAGNE の理論に基づいて,教授方略が用い られるべき範囲を明確に示したものである.実証的研究 を行う際にも,たとえば,「先行オーガナイザは効果的 か」という一般的な問いは,先行オーガナイザの根拠で ある AUSBEL の包摂理論によれば意味のある問いで はない.先行オーガナイザの効果は,理論的にいって条 件によって異なるので,たとえば,「与えられた条件の 下で,このタイプの課題の学習を促進するのには,先行 オーガナイザをどのように組織するのが最適か」といっ たような処方的な研究課題がより意味をもつ.つまり, 言語情報の学習に効果があるとされている教授方略であ る先行オーガナイザの構成法がそのまま知的技能の学習 にも有効かどうかは,学習課題を変えて検証するまでは 明らかでないからである.さらに,先行オーガナイザを 与えられない処遇の学習者が自ら学習課題の構造をとら える学習方略を発揮できる場合には,先行オーガナイザ を与える付加効果は期待できないので,学習者特性と課 題との関連性についても言及されなければならない.

 教育実践に役立つ研究の在り方に関する BRIGGS (1984)の論文や教授方略の効果を規定する因子を示唆 するBLOOM(1976)の学校学習モデル(図2)等を参 考にした場合,教授方略をめぐる研究では次の研究方法 上の諸点を確認することが求められていると思われる.

 1.実証的研究としての質的レベルは適当かどうか?(実験計画の内的・外的妥当性の問題)
 2.学習目標が明確に記述され,目標と教材,評価方法(テスト)の相互に整合性が保たれているか?(授業設計上の妥当他の問題)
 3.学習内容が現実のカリキュラムを反映しているか?
 4.教授方略の効果に影響を与えるとされている因子を考慮しているか?
 a.学習成果のカテゴリーと教授方略の関係は?
 b.当該学習と関連のある既存の知識・技能(とくに必須前提条件)は?
 c.教授方略の不備を補う能力の影響は?
 d.動機づけに影響を与える因子は?(課題の魅力,当該分野での学習経歴,学習環境の非日常性等)

 教授方略の効果を検証するためには,その教授方略を 含む授業を行って効果があったことのみでほその事例を 超えての一般化に限度があり,比較の対象となる統制群 を含んだ実験室的な研究方法をとるのが普通である.近 年,CAIを研究の手段として用いる例が多く見られる のも,CAIコースウェアの一部に手を入れて二つのパ ージョンを作ることで,精度の高い実験環境(すなわち Aotbe)が容易に準備できることを利用しているためで ある.さらに,乱数発生による被験者の自動配置,学習 記録の自動収集,オンライン分析等の特長を活用でき, あるいはCAIを使ってしか実現できない瞬時適応型の 学習環境における授業設計モデルの在り方(TENNYSON 1987)の研究等,今後も研究の手段としてCAIはます ます重要になってくると思われる.
 前述の教授方略の効果に影響するとされている因子 (4a−d)を考慮するためには,f検定や1元の分散分析 よりも,多元の分散分析や共分散分析,重回帰分析等の 統計的手段が広く用いられている.さらに,中間項的な 因子を含む効果の流れ全体を検討する手法として,バス 解析法の実験研究への応用も試みられている(SUZUKI 1987c).多くの因子を分析しない場合には,少なくとも 影響のありそうな因子について言及し,その範囲を超え た一般化に対する注意を促す必要があろう.また,実験 計画上の配慮に加えて,実験に用いた授業の学習目標を 明らかにし,目標に整合した学習効果の評価を行う等, 授業設計上の配慮も十分になされることが必要である. このように精練された研究を重ねることで,ある一つの 教授方略の効果を探る実証的な研究を理論やモデルへと 体系化していく道が閃かれてくるのである.

 4.4.授業設計モデルへの体系化を目指す研究

 個々の教授方略一つずつの効果を立証する研究に対し て,授業の全体像を明らかにして,授業設計の実践に役 立つ処方を提供しようとするタイプの研究がある.授業 設計の課題を分析する視点を示し,数ある教授方略の中 のどれをどのように用いるか決定する基準と手順を提案 するための研究である.このタイプの研究の成果として 授業設計モデルが提起され,モデルに示されるノウハウ が何故最適かを説明する教授理論の発展へとつながるこ とになる.
 教授方略を整理し,統合するための枠組として広く知 され,その評価が高いものにGAGNE(1985)の9段階 の授業状況(instructional events;教授事象とも訳され ている)がある.九つの授業状況のそれぞれについては 既に詳しく紹介されている(GAGNE 1975 の邦訳の第5 章,1985この邦訳の第12章;GAGNE and BRIGGS 1979 の邦訳の第9章;中山ほか1987,P.113〜118).ここで は,九つの段階のそれぞれが学習者の内的な情報処理過 程の各段階(学習位相)を援助する目的をもって提起さ れていることをつねに念頭におく必要があることのみを 指摘したい(表1).学習を支え,促進するための働きか けが授業であるとの視点を強調し,学習過程の理解なし に授業設計は成立しないとの立場を具体的に示すもので ある.

表1 GAGNEの授業状況と学習位相との関係

授業状況学習位相との関係
1.注意の獲得神経インパルスのパターンの受容
2.学習者に目標を知らせる実行制御過程を活性化する
3.前提学習の再生を刺激する活性化している記憶の検索
4.刺激となる教材を提示する選択的知覚に訴えるため要点を強調する
5.「学習の指針」を与える意味的符号化
6.実行を引き出す反応機構を活性化する
7.実行が正しいかどうかフィードバックを与える強化する
8.実行を評価する検索を活性化する:強化を可能にする
9.保持と転移を高める検索のための手掛りと方略を与える


 GAGNEの九つの授業状況は,典型的な授業の構成要 素を示すものであるが,必ずしもすべての投業に9段階 の教授活動がそのまま組み込まれていなければならない ということを意味してはいない,9段階は学習の成立の ために必要な条件を示し,学習者が自ら内的に充足でき る状況は外から教授活動として与えてもそれ以上の効果 は期待できないのである.たとえば,学習老が授業に期 待感をもち学習に対する構えが成立している場合は,第 1状況の「注意の獲得」は必要ない.注意を喚起する教 授方略を加えても効果のないことが予想され,むしろ, やる気をそぐなどの逆効果の危険まで伴うかもしれない のである.また,学習者によって授業状況が内的に充足 される点をさらに進めれば,九つの状況をメタ情報とし て学習者に与え,学習過程を自ら制御する学習方略を身 につけさせる訓練にも応用できる.

 REIGELUTH and CURTIS(1987)が指摘するように, GAGNEの授業状況は,これまでの教授方略の研究成果 を統合し,その方略が学習過程のどの部分を促進したた めに効果的であったかを整理する上で果たしてきた役割 は大きい.また,授業設計の実践に際しては,整理され た教授方略を取捨選択しながら,九つの状況に従って授 業を構成することを可能にした.つまり,九つの状況の 枠組と整理された教授方略をもって,マイクロ設計のレ ベルでの授業設計モデルを提供しているといえよう.九 つの授業状況を踏まえて授業を設計した方が踏まえない より効果的であることが実証的にも明らかにされている (MENGEL1986,持留・永石1985).

 九つの授業状況と並んでGAGNEの教授理論の中核 をなすものは五つの学習成果の分類である.この分類は, 「学習に最もふさわしい条件が異なる」学習成果をタイ プ化し,同じタイプの学習成果には同じ教授方略が,異 なるタイプには異なる教授方略が最適となりうるという 観点での,授業設計上のものである.これは,授業の方 法を学習課題の佐賀に対応して最適化していくためのガ イドラインを示そうとするもので,しかも,教授方略の 効果の一般化が可能な範囲をできる限り広く設定しよう とする試みである.たとえば,学習ヒエラルキー分析の 研究に基づいて,ヒエラルキーの下位目標の達成を促せ ば当該目標に達成させうるという特質をもった学習課題 はすべて「知的技能」(intellectual skills)として分類 される.逆に,より包括的なコンテキストを与えること で当該目標の達成を促進することのできる課題は「言語 情報(verbal information)」の分類に入るのである.そ の他の分類についても GAGNE 特有のものではないが, 教授方略の効果を左右するかどうかを検討した分類であ ることが,授業設計モデルの枠組として重要な意味をも つと思れれる.

 すべての学習課題に対して前出の9状況が適応される 一方で,各状況で最適な方略は与えられる学習課題がど の学習成果に分類されるかで異なる.とくに,第3,4, 5状況で用いられる方略は学習成果毎に大幅な差がある (鈴木1985).たとえば,第3状況の「前提学習の再生」 では,「知的技能」の課題にはヒエラルキーの下位目標 の技能を,「言語情報」の課題にほ包括的で有意味なコ ンテキストを短期記憶に呼び戻すことが効果的である. ここに,授業構成の枠組は同じでも処方される方略は学習課題の性質(学習成果の分類)によって異なる,という図式が成立した(GAGNE and BRIGGS 1979,邦訳p.20).

 これまでの多くの授業設計モデル研究では,学習課題の明確化や分析に力点が置かれ,授業を支配する他の要因(学習者特性,学習集団等)については示唆に乏しい.その理由としては,第一に処方的なアプローチを強調し,一定の学習目標の到達から逆のぼって授業が設計されていることがある.MAGER(1975)の三つの質問が示すように,まず,目標は何か(Where am I going?),次に目標到達を何で評価するか(How will I know when I've arrived?),そして最後にどうやって目標に到達するか(How will I get there?)の順で設計が行われ,必然的に課題分析に力点が置かれてきたのである.しかし,そのなかで,課題を分析し前提条件となる知識・技能を確認することでその前提条件の有無によって学習開始地点を個別に変化させたり,また個々の学習ペースやその他の学習者制御を取り入れたりして,個人差に対応してきた側面も見逃せない.

 第二には,ATI研究等の個人差対応の方略に関する研究の知見のなかで,授業設計で参考になるものが限られていたことが挙げられよう.CLARK(1984)は,個人差研究に基づいた授業設計モデルは,これまでのところ確立されていないと指摘している.また,GAGNEらは,学習に影響の強い因子として学習者の知的能力とこれまでの学習で積み上げされた知識・技能を挙げ,それに匹敵する影響力をもつ他の学習者特性はこれまで明確にされていないと指摘している(GAGNE at al.1988,GAGNE and DICK 1983).TOBIAS(1987)は,今後研究の所産の活用が待たれる領域として,不安傾向(anxiety),学習技能(study skills),動機づけ,原因帰属理論(attribution theory)の諸概念を挙げている.
 集団学習と個別学習という点では,これまで個別学習形態で教師の手を介さない場合の教材の設計が重点的に取り上げられてきた.これは,授業設計が「個人の学習を助長することを目指すべき」であり,「学習者はしばしば集団形態で学習活動を行うが,学習は集団の各成員内で生じる」(GAGNE and BRIGGS 1979,邦訳p.3)との考えに基づくものとの解釈が可能である.独立型の個別学習教材を設計開発する経験を通して得られる授業設計上のノウハウは多く,集団形態の授業に応用できるものも多々ある.一方で,たとえば,GAGNE and BRIGGS(1979)は,集団学習と個別学習では九つの授業状況の中身がどのように変化するかを説明したり,DICKand CAREY(1985)のモデルでは,個別教材を開発する場合,既存の教材を選択する場合,集団に対して教師が指導するための計画をする場合の三つについて,授業設計の各段階を説明している.

 しかし,BRIGGSが指摘したように(前出の短所4),教師の役割や学習者集団の影響についての知見はこれまでの授業設計モデルにはあまり取り入れられてこなかった.最近になって,REIGELUTH and CURTIS(1987)は,授業の送り手を(1)専門職の人,(2)専門職以外の人,(3)設計された環境(人間以外),(4)設計されていない環境の四つに,また授業の受け手を(1)個人と(2)集団の二つに分類し,合計8種類のなかから最適な形態を選択するための基準を30示した.授業の形態は,学習者の特性ばかりでなく,学習内容の特性や,集団作業の必要性,学習資源への配慮等によって決定されるべきものであり,多くの研究課題を今後に残していると思われる.個々の学習形態の特質と最適な形態の選択方法についての研究に加えて,複数の授業形態を用いることでもたらされる新奇性や動機づけの維持などへの影響も長期的な研究で明らかにされることが期待されよう.集団学習形態においては,集団を形成すること自体よりも,その集団の中で学習者が相互作用にどのように関与するかが重要とされているので(WEBB 1982),集団学習を選択した以降のより詳細な方略の効果が検討されなければならないであろう.

 動機づけに関しては,学習目標が達成できるように授業設計をすることによって意欲を高めればよいとされ,研究が立ち遅れていた.成功体験を積み重ねることは意欲を高め,持続するために有効な条件であることは確かであり,課題分析などの手法を用いて授業を解りやすいものにすることが動機づけのためにもプラスに働く.しかし,これまでの授業設計モデルの枠組の中では,動機づけはあくまでもある(おもに認知領域の)学習課題を達成するための手段として位置づけられていたといえる.たとえば,GAGNEの第2授業状況の「学習者に目標を知らせる」営みには,学習すべき事柄を明らかにすることで期待感を持たせ,目標達成時にすぐ到達した成功感をもてるようにする動機づけ上の意義があるとされている(GAGNE 1985, p.311).

 授業の成果としての「魅力」が重要な研究課題として取り上げられるようになってから,動機づけを授業の手段としてのみならず,授業の成果として認識した研究が行われている.そのなかで,授業設計モデルとして動機づけの問題を体系化したものにKELLERのARCSモデルがある(KELLER 1983, 鈴木1987b).KELLERはこれまでの膨大な動機づけに関する心理学的な研究等を統合し,授業設計に応用するという立場から学習意欲を規定する要因を四つに分類した.「注意(attention)」,「関連性(relevance)」,「自信(confidence)」,「満足感(satisfaction)」の4要因(すなわちARCS)に分類された動機づけ上の方略を多数提起し(KELLER and Kopp 1987, KELLER and SuzuKI 1988),授業の「魅力」を高めるためにARCSモデルを授業設計の中にどのように組み込んでいくことができるかを詳しく説明している.

 KELLERのARCSモデルに含まれている学習指導上の方略のそれぞれはとくに目新しいものではなく,授業設計に携わる者なら幾つでも挙げることが可能であろう.しかし,KELLERの貢献は,理論的な見地から学習意欲を規定する要因を分析し,それによって動機づけの問題のシステム的な解決方法を提案していることにあると思われる.授業の設計にあたって,まず対象となる学習者の動機づけに関するプロフィールを作成し,ARCSのどのカテゴリーに指導の重点を置くかを決定する.さらに,学習課題や学習場面のもつ心理的な特質を考慮し,どの方略をどの程度,どの時点で組み込むかを計画する.この一連の動機づけ設計の過程は,学習者の意欲がARCSの各カテゴリーでどの程度向上したかを見ることで評価され(授業の成果としての「魅力」),さらに,学習意欲の向上が学習の成果を高めることにどの程度寄与したかも評価の対象となる(効果,効率の側面).

 動機づけモデルには,他にWLODKOWSKI(1981, 1985)の時系列モデルがある.このモデルも,やはり授業のために動機づけの諸概念を統合し,教授方略を生み出す手助けになることを目指したものである.WLODKOWSKIによると,動機づけに影響する要因は,学習開殆時,学習中,終了時で異なり,開始時では学習者の環境,教師,教科,あるいは自己に対する態度や欲求の状態に左右されるとする.一方,学習中には,学習経験の刺激性や情意的・感情的な側面が要因となり,学習終了時には学習の結果得られた能力や与えられた強化の価値が影響するとしている.また,学習技能の訓練という立場からMCCOMBS(1984)が提案しているモデルとして,学習意欲を持続させるカを学習者に身につけさせることを狙ったものがある.

 授業設計モデルへの体系化をガイドする指標について最後に触れておきたい.それは,「折衷主義(eclecticism)」である(MARTIN and DRISCOLL 1984, SNELBECKER 1983).授業設計モデルは,提唱者がいかなる立場によっていても,問題解決の道具として用いられる際に,システム設計の思想によって着色されることを免れない.ある部分は削除され,ある部分は増幅されて応用されるのがつねである.技法のみが理論から遊離して用いられることも多々あると指摘されているが,理論的な説明がつかない技法を用いることをためらう必要もない(HEINCH 1984).モデルへの体系化に当たっては,授業設計に有効と思われる知見は何でも使うことを試みる折衷主義が最適と思われる.「バラダイム変換」の中で変貌を遂げたGAGNEの教授理論を一貫して支えてきたのはこの折衷主義に他ならず,授業設計の助けになる研究所産を次々に取り込れて,現在最も広範囲に適応可能な理論体系を築き上げてきた.画面構成理論(CDT; MERRILL 1980)やREIGELUTHの精緻化理論,KELLERのARCSモデルも折衷主義に基づいている.
 教授理論はいかにあるべきかをREIGELUTH(1983)は八つの基準でまとめている.授業設計モデルが優れた教授理論を反映して構築されるとすれば,以下の点を念頭に置くべきであろう.すなわち,

 1.内的に一貫性・整合性がある.
 2.応用範囲や限界が明示されている.
 3.実証的なデータで覆されていない.
 4.簡潔である(説明因子が少ない).
 5.実際に役に立つ.有用である.
 6.多面的な方略に富み,説明力が高い.
 7.最適である(他より優れている).
 8.適応できる範囲が広い(REIGELUTH, p.25).

4.5.モデル応用技法に関する研究

 授業設計モデルを利用されて効果のあるものにするために,前節でみてきたモデルの構築や改善を目的とする理論的な研究と並行して,モデルを使うための技法を提供するための研究が行われている.これは,モデルの使い勝手をよくして,モデルに含まれている可能性を最大限に取り出すことができるように,モデル利用者を援助するものであるWINN(1987)が指摘するように,現在の授業設計モデルは,あらゆる場面での応用を成功裏に終わらせることができるほどの完成度には至っていない.理論的な裏付けが十分でなく,授業設計に携わる者の経験や直感に頼っている部分があるからである.また,モデルに示唆されている理論的な根拠を読み取り,それを直面する問題に応用するために要求されている労力が過大で,実践家の間で授業設計モデルが広く普及するのを妨げていることも指摘されている(SNELBECKER 1983).

 MCCOMBS(1986)は,授業設計者を養成する立場から,「授業設計モデル利用者のための訓練プログラム」の開発を提唱している.この種の研究では,まず授業設計開発の各段階に含まれている作業内容を明確にし,授業設計モデルを授業設計の手順自体に応用して,分析された作業内容をこなすことを目的にした教材を作成するのである.すでに,たとえば,DICK and CAREY(1985)の著書には,授業設計手順の各段階を本の章立てに用い,各章には学習目標,概念,実例,演習問題とフィードバックが含まれ,読者が授業設計の技法をDICK-CAREYモデルに従って学習できるように工夫されている.かつては授業設計の指導は大学院でのみ行われていたが,近年は学部レベルの教員養成課程の一部としても取り上げられており,実践家の中にも徐々に授業設計のノウハウの基凝を備えた人材が増える傾向にあると思われる.

 一方で,モデルの使い勝手を向上させるために,作業の簡便化を図ることが考えられる.それは,モデルを利用するために必要な訓練や手間を軽減し,モデルをユーザー・フレンドリーにする試みである.たとえば,MERRILL and WooD(1984)は,学習内容の分析,教授方略の決定,教材の作成とCAI画面への転換を支援するコンピュータ援助の授業設計システムを開発した.大規模の教授システムの開発過程を効率的で規格統一されたものにするための援助プログラムの試案もKEARLEY(1986)が報告している.既存の授業設計モデルの中でも,たとえば,REISER and GAGNE(1983)の開発した教授メディア選択手順のフローチャート化や,画面構成理論に見られる選択表(MERRILL 1983)のように作業をアルゴリズム化する試みも多くあるが,作業の手順化で理論的根拠を忘れることのないように配慮が必要であろう(鈴木 1985).

 モデルの使い勝手をよくするためのもう一つの試みとしては,応用の場面の特質に合わせてモデル自体を改良することが考えられる.たとえば,学習者や学習環境が特定できる場面においては,それぞれに適切な教授方略のみを検討するように,最初から侯補となる方略を限定することが可能である.また,場合によっては,開発の手順そのものを改訂することも検討されてよい.たとえば,授業実施者自らが授業を設計する時など学習者集団へのアクセスが容易な場合や,CAIコースウェアなどのように教材の改訂が容易な場合には,形成的評価の実施を授業設計の初期から多段階に渡って複数回組み込むモデルも考えられている(SUZUKI 1987b).

 モデルの使い勝手を向上させる研究を重ねることは,モデルに従って授業設計を行う過程そのものをより具体的に知ることにつながる.モデル利用者の範囲を拡大するためには,経験や勘に頼る部分をできるだけ少なくすることが求められるのである.そして,究極的には,授業の設計を授業の実施と並行して行うためのメカニズムを備えた「自己設計システム」の構築を目指した研究に通じる(WINN 1987).CAI教材の設計(つまり自己教授システムの構築)によって教授過程がより詳細な形で分析されて教授理論の進歩がもたらされたように,「自己設計システム」の開発を目指した研究によって授業設計過程をより詳細に明らかにすることも不可能ではないであろう.TENNYSON(1987)の手掛けているMinnesota Adaptive Instructional System(MAIS)の研究は,教授理論そのものを知的CAIに組み込むことを目指し,「自己設計システム」の構築に向けての示唆に富むものである.同時に,MAISは教授方略の効果に影響をもつ数多くの因子をトータル・システムとして一度に制御できる研究のための環境でもあり,教授理論の発展にも大きな影響を与えることが期待されよう.


5.終りに

 本稿では,授業設計モデルの研究に関する米国の動向をさまざまな角度から概観し,考察を試みた.歴史の浅い若い研究領域だけに概念の規定等が明確とはいえず,研究の所産を実践に活かすのは必ずしも容易ではないと思われる.しかし,多くの研究者が研究活動のおもな領域として授業設計モデルや教授理論に関係をもち,活発な研究が行われていることがうかがえ,領域の発展が期待できそうである.米国における研究の結果がそのままわが国の実践に適応できる訳ではないが,「折衷主義」に基づけば,参考になる知見は多くあると思われる.


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 Summary

This article is a review of research trends in the field of instructional design in the United States where a number of currently-available models and their theoretical underpinnings are being evaluated in order to identify new problems in research. The author's review and discussion covers the following areas:
(1) Although most of the current models are in agreement regarding the steps involved in designing instruction, they vary as to theoretical adequacy and practical value.
(2) An integration of various instructional theories which should lead to improved theoretical explanations for instructional design models has been initiated thanks to the contributions of REIGELUTH.
(3) Such concepts as descriptive versus prescriptive theory, aspects of design and development, micro versus macro design, appeal as an outcome, and various conceptions developed from schema theory have recently begun to catch the attention of scholars and researchers.
(4) Research on the effects of instructional strategies is expected to become increasing diverse and higher in quality so that these findings can be interpreted in the creation of new models.
(5) The use of such conceptual frameworks as GAGNE's "Nine Instructional Events and Five Learning Outcomes" are being advocated as means for constructing better prescriptive models. Eclectic approaches are also being advocated as means for optimizing these models. Systematic efforts in such areas as group learning processes and motivation are also being observed more frequently.
(6) In addition to the above scientific research, technical investigations on the training of model users and in making models more user-friendly are also being carried out.

Key Words: INSTRUCTIONAL DESIGN, INSTRUCTIONAL THEORY, INSTRUCTIONAL MODELS, INSTRUCTIONAL STRATEGIES, SYSTEMS APPROACH
(Received May 14, 1988)