Keller, J. M., & Suzuki, K. (1987). Use of the ARCS motivation modelin courseware design. In D. H. Jonassen (Ed.), Instructional designsfor microcomputer courseware. Lawrence Erlbaum Associates, USA, Chapter 16.
日本語版(鈴木による翻訳) (※※ 翻訳権未取得につき,取扱注意 ※※)



第16章 ARCS動機づけモデルの応用

ジョン M ケラー
John M KELLER
フロリダ州立大学
Florida State University

鈴木克明
Katsuaki SUZUKI
フロリダ州立大学
Florida State University


ARCSモデル
 注意(Attention)
 関連性(Relevance)
 自信(Conridenee)
 満足(Satisraetion)
問題点
 動機づけ目標
 学習者集団の分析
 「動機づけ」と「精紳衛生」
動機づけ方略
 注意のカテゴリー(A)
 関連性のカテゴリー(R)
 自信のカテゴリー(C)
 満足のカテゴリー(S)
ARCSをコースウェアに応用するには
 1.タイトル画面
 2.導入部分
 3.メニュー画面
 4.情報程示と学習ガイダンス
 5.練習とフィードバック
 6.評価と終了画面
要約
 表16.1. 注意喚起の方略見本
 表16.2. 関連性碓立の方略見本
 表16.3. 自信構築の方略見本
 表16.4. 満足感創出の方略見本


 動機づけ(motivation)という言葉は、コンピュータや教育に関する文献の 中で頻繁に使われている。文献には、生徒たちにコンピュータを使わせた時の 興奮を伝える証言が満載されている.にもかかわらず、コースウェアについて の多くの批判が開かれ、コンピュータを使いたい生徒の全体数も、未だに驚くほど少ないことが報告されている(Pulos,Fisher&Spage,1985).

 この食違いに対して、いくつかの説明が考えられよう.一つには、コンピュ ータを道具として使うのか、それとも教師として使うのかを区別することであ る。Logo(Papert,1980)のように道具として使うときには、ちょうど金づちや 外科用のメスや電子レンジなどのように、それぞれの状況の中での問題を解決 する手助けとして用いられる.生徒が目的を確認して、解決策を造る.そして、 その解決策をコンピュータ上にプログラムして試す.動機づけは、主として課 題への興味によるものであり、その道具への動機づけは、道具が目的を達成す る手助けになっている間は高く保たれる.

 一方、数学や語学など通常の教科の授業の中で、教師あるいはチューターと してコンピュータが使われた場合、似た状況ではあるが、いくつかの重要な違 いがある。コンピュータはある目的を達成するための手投として使われること には相違ない。コンピュータの役割は授業内容を伝えることである.ところが、 達成すべき課題は機械の枠内にとどまりがちで、課題の形式や構造も様々な形 で機械に制限される.例えば、情報へのアクセスは、機械がコントロールする。 たとえ学習者が、プログラムの任意の部分にアクセスできるようになっている 場合でも、順序、フイードバック、あるいは他の情報の流れについては、機械 にプログラミングされているわけである.

 この外的なコントロールには、良い効果と悪い効果がある.本を使うときは、 どの部分にも簡単にアクセスでき、書式や構造、あるいは内容をさっと見るこ とが容易である。それとは対照的にコンピュータの場合は、メニュー、分岐、 スクローリングなどで、徐々にしか見られない。これは、閉じ込められたよう であり、いらだたしくもあるが、同時に、刺激的でもある。授業設計者は、こ の生徒の準備が整うまである情報へのアクセスを制限できることを使って、もっ と知りたがる気持ちを起こさせたり、秘密めいた雰囲気を作ったりすることが できる.

 一部の熱狂的な支持者がいる中で多くの人がコンピュータを使わないもう一 つの理由として、授業設計の中でコンピュータの特徴がいかに使われているか ということがある.コンピュータを使った授業を始める当初は、多くの人にとっ て、珍しいものであり、魅力的である。教育用のプログラムの多くには、動き のあるグラフイリクであるとか、音響効果、相互的なやりとり、自動的フィー ドパック、ゲーム、あるいは結果を恐れずに間違えられる気楽さ等が盛り込ま れている.

 ところが、これらの特徴の新規さが薄れたとき、学習者は、コンピュータを 使わない授業で動機づけや作業能率に影響することと同じことに敏感になって くる.もしコンピュータを使った授業がよく設計されていなかったり、新規さ のレベルを越えた動機づけへの魅力を備えていなければ、学習者の熱中ぶりは 影を薄め、コンピュータは見捨てられる.プ−ロスら(1985)は、コンピュー タ設備のよく整った典型的な中学校でのコンピュータ利用率が低いことを報告 している.

 となれば、コースウェアの設計における主要な問題は、いかに効率的で効果 のあがるものにするかということに加えて、新規さの効果を越えたレベルでい かに魅力的にするかということにある.この章の目的は、コースウェアの動機 づけの側面を設計するシステム的な方法を示すことである.ARCSモデル(Keller, 1984)と呼ばれるこの方法をまず槻親し、次に動機づけとコースウェ ア設計に関するいくつかの間貰点について述べる.これによって、章の残りの 部分への基礎が示されよう.後半では、まずARCSモデルに含まれる具体的 な方略の種類について述べ、次にそれらの方略がコースウェアの様々な部分に どのように係わっているかを説明する.最後に、方略の要約を表に示す.
 
 

ARCSモデル

ケラー(1979、1983)は、個人の動機づけを説明するための4因子理論を開発 した.人間の動機づけに関わる多くの領域の研究を競合し、学習意欲を刺激し、 持続させるための動機づけの方略を授業にどのように設計するべきかという問 いに答えることをその目的とする理論である。この理論は、叙述的(deseript ive)理論と処方的(preseriptive)理論双方の特性を有するが、開発途上の 現時点に於いては、利用者の自得を助ける(heuristie)理論としてとらえる のが適当であろう.学習意欲に関心を狭めた場合(Brophy,1983;Brophy& Kher.in press)にも、人間の動機づけに関わる要素は福祉で相互的であり、 使いかってのよい処方を書くのは困難である。その代わりとして、ARCSモデ ルを示唆あるいは案内として問題解決的に取り組めば、コースウェアの動機づ け特性を向上する助けになる。

 ARCSモデル(Keller.1984)では、学習意欲に関わる因子は4つあると 仮定する(図16.1)。1つめとして「注意」(attention:A)、2つめに は「関連性」(relevanee:R)、3つめに「自信」(conridenee:C)、そし て4つめに「満足」(satisraetion:S)である.この4つの因子を定義した ことに加え、このモデルには、各因子中の動機づけ特質の下位カテゴリーが示 されており、それぞれの動機づけ要素を刺激・維持するための方略の例が含ま れている(Keller.1984:Keller&Kopp,1987).このモデルは、システム 的な授業設計過程の中で用いられ、授業対象者の動機づけプロフィールを作っ たり、動機づけの目標を設定したり、動機づけの方略を設計し、実地テストし、 評価するのに役立てられる.

図16.1 ARCSモデルの4因子
注意(Attention): 
好奇心と注意を喚起し持続させる
関連性(Relevance): 
授業と大切な欲求や目標を詰び付ける
自信(Confidence): 
成功への自信を啓発する 
肯定的な期待感を起こさせる
満足感(Satisfaction): 
強化を管理する 
制御手段をコントロールする
 

注意(Attention)

 生徒の学習への動機づけの第一の要素は注意(Attention)である.動機づけ られるためには、学習者の注意が喚起され、維持されなければならない(図1 6.1).動機づけよりもむしろ学習と課題の履行に関与している学習の情報 処理モデルでも、学習は注意から始まるとされるが、その重点は異なる.情報 処理モデルでは、学習課題や履行条件の顕著な要素に注意を「導く」.動機づ けの際の関心は注意を「得る」ことと、「維持する」ことにある.
 ARCSモデルの中で、注意のカテゴリーには、好奇心(curiosity:Berlyne、1965:Maw & Maw、1968)や感覚探求(sensation Seeking,Zuekerman、1971)等に関連したように、どのように注意が得られるのかを説明するために役 立つ因子が含まれる.ある意味では、これは動機づけの中で最も簡単なステッ プである.我々の注意は、新奇なもの、びっくりするもの、調和しないもの、あるいは不確かをものなどによって喚起される(Berlyne,1965:Kopp,1982). 注意を刺激したり維持するためには、驚<べきことや予期しないことを持ち込 んで、知覚レベルでの好奇心を喚起することができよう.あるいは、パーライ ン(Berlyne,1965)が認識レベルの好奇心(epistemic curiosity)と呼ぶよ り深いレベルの興味を刺激するようを問いかけ行動に引き込むこともできよう.

関連性(Relevance)

 ARCSモデルの第二の要素は関連性(Relevanee)である(図16.1).生徒 の注意が得られた後、生徒は何故この教材を勉強しなけれはならないのかを知 りたがるであろう.「これ、僕の興味や目的とどんな関係があるの。」と、質問 するかもしれをい.この質問に対して明確な答えを出すことで、生徒を意欲的 にさせる一助となる.
 関連性には、結末という側面と、過程という側面がある.結末の側面は、主 として実利的なものである.もし、授業の内容が生徒の将来の重要な目的を達 成するために役に立つものと思われれば、学習意欲は高まりやすいとされてい る(Raynor.1974).このことが、学校で教える多<の教材に対して、伝統的 に理論的根拠として使われてきた.この教材はすぐに役立つことはないかもし れないが、生徒の将来に重要になる、と主張されるのである.この理由づけは、 将来指向の生徒や、親や文化が現在役立たない知識も長期的に利ありとする手 本を示している場合、あるいは、単に権威を受け入れ易い生徒には、通用する。 しかし、より全面的に今に生きているような生徒には通用しない.

 結束を指向した関連性でも、常に将来を目指している必要はない.人は、今 の自分自身を高めたいとか、重要で受け.入れられた人間でありたいと思うもの である.授業の内容を生徒の現在の関心事や過去の体験に結び付けることがで きれば、関連性は増す.

 関連性に影響する過程の側面は、主に生徒のニーズを満たすことと授業の方 法との関係である。例えば、帰属の欲求に強い人は、競争のないグループの作 業場面を好む(Alsehuler.1973).達成動機の強い人は、ゴールや基準を自 分で決められて、目的達成の個人的責任の度合いが強い場面を好む.課題への 意気込みや重要性を伝える表現法で、同じような感情を生徒に起こさせること が手助けできる。

自信(Confidence)

 授業に興味を持って関連性に気づくことに加えて、生徒が強く動機づけられ るためには、受け入れることができる程度の成功の確率があると思うことが必 要である.換言すれば、生徒達が自信を持つ必要がある(図16.1).これは、 成功が保証されていなければならないということではない.人はしばしば挑戦 を楽しむものである.しかし、挑戦は、受け入れることのできる範囲内にある 必要がある.

 自信には、いくつかの次元がある.最も重要な3つの次元は、本人が感じて いる自分の能力、制御力、そして、成功への期待感である.

 人々は、有能であると感じたいという欲求があり(Hhite.1959)、成功す るのに必要と思われる能力を持ち合わせていると信じている場合には、その課 題に取り組む意欲が湧く.しかし、学習の場面では、しはしば自分が有能だと は思わない領域で新しい技能や知識を獲得する必要性に迫られる.学習の過程 において意欲を高める条件は、一旦獲得した後で課題を履行するための意欲を 高める条件とは異なる.最初の場合は、恥をかくことなく誤りを犯せる自由が 必要であり、二番目の場合は、力を出し切れるようにある程度の挑戦や危険性 が必要である.

 知覚された制御力(perceived control.Bandura.1977:deCharms.1976: Rotter,1966)もまた自信につながる.自分で選択することや努力の程度が直 接的に自らの行動の結果に影響があると信じるとき、人々は自分の行動により 自信を持つ傾向がある.それと対照的に、無力感(Keller.1975:Seligman, 1975)や運やコントロール不可能な外からの力が人生を主に左右するという信 念(Heiner.1980)を持つと、辛抱強さが無くなり、憂うつ状態に陥りやすい. 結果に対する個々の制御力を感じさせる授業は、粘り強さと自信を育む働きが ある.

 自信の第三の構成要素は、成功への期待感であり、それは、自己成就予言(s elf-fulfing propheey、Jones.1977)に似ている.人は、ある課題に成功 できると思えば、より多くの努力を重ねがちで、転じて、その努力が実際に高 い率の成功につながる.このことは、もし、人々の期待感がしばしば客観的を 成功の確率と掛け離れているという事実がなければ、取るに足らない言説であ ろう.しかしながら、客観的な意味からは正しくない信念を持っていることは 十分あり、その信念そのものが誤った信念を現実にするような行動を導く可能 性がある.
 
満足感(Satisfaction)

 ARCSモデルの第四のカテゴリーは、満足感(Satisfaetion)である,もし も学習者の努力の結果が期待に添うものであって、結果について良く思えれば、 学習者は意欲的であり続けるであろう.従って、「満足感」の主たる効果は、持続される動機づけ(continuing motivation)であり、これば最初マーラ(Mae hr.1976)が、後にマーチンとブリッグス(Martin & Briggs,1985)が定義づけた.満足感に影響を持つ因子としては、強化とフィードバック、本来備わっ ている内的な報酬、それに、認知的な評価がある.

 望まれる行動をシェイピングし維持するために用いられる強化のスケジュー ルは、課題への動機づけを支える,この条件づけが適切に使われれば、学習者 は予期した通りに報酬を受けることになり、それによって、学習行動と結果の 間に一貫性が保証されているという感覚を育てることができよう.学習者にとっ て報酬が重要である限り、学習意欲は高く保たれる.

 場合によっては、外部から付帯的に加えられた報酬のシステムによって、動機づけが低下することがある。特に、報酬が学習の結果として無理なく与えら れるのではない場合や、誰か他の人によって明らかに制御されている場合はそ うである(Condry,1977:Deei,1975)。もしもある人が課題に本来的に興味を持っていれば、付帯的な報酬を与えることでその人の注意を課題からそらし てしまい、報酬に注意を向けてしまう.ある意味でこれは、即ち内発的な満足感は、成功した、しかも自決的を努力に関係があるということである(Cross.1 981).デシとライアン(1985)やウォドコフスキー(1985)は、満足感に関連し ての内発的にあるいは外発的に動機づけされた行動間の複雑な関係を説明して いる.

 満足感の第三の要素は公正さ、つまり認知的な評価である.これは、内発的な満足感という考え方に関連しているが、もっと特殊な意味で、期待に照らして結果を評価する内的な過程を指す.評価は、純粋に情意的なレベルでもあり得る し、また、認知的レベルでもあり得る.つまり、ある状況に対して当初「腹の底で感じた」感情的な反応も後の内省によって変えられることもある.例えば、 あるプロジェクトにあまりに懸命に取り組み、自画自賛し、高い期待を寄せた ために、プロジェクトが終わった直後に作品の出来栄えに満足できないという ことがある.しかし、ただ単に喜ばせようとしてでなく、客観的に見てくれた 人からの二三の肯定的なコメントで、今までの見方を直して、胸を撫で下ろす ことができる.アダムス(Adams,1965)やデシとポーラック(Deei&Porae. 1978)がこの問題を扱っている.

 要約すると、ARCSモデルには、個々の動機づけに影響する四つの因子カ テゴリーが含まれている.動機づけの過程には、学習者の注意を喚起し維持す ること、授業の関連性を確立すること、学習者の自信を培うあるいは持続させ ること、そして、満足できる結果を提供することが含まれる.
 

問題点

 ARCSモデルを応用するにあたって、あるいは他の動機づけ設計のどの方 法を用いる際にも、学習意欲そのものの本質や学習意欲に影響を与える条件に 関連して幾つかの問題点を考えておくべきである.三つの重要な問題点は、動 機づけ目標の明確化、学習対象者の授業開始時の特徴、そして、方略の選択に あたっての「動機づけ効果」対「精神衛生上の効果」という問題である.

動機づけ目標

 普通、動機づけの効果は次の二つのうちのどちらかで測られる.一つ目は「情意的反応(affeetive reaction)」のレベルである.学習者に授業がどの位 好きだったかとかよかったかを尋ねる簡単な評価尺度や意味尺度を与えるので ある.二つ目は、成績のレベルである,動機づけの方略が「学習の履行」を向 上させるのに効果があったかどうかを測定する.両者共に、不適切でないとし ても不十分である.

 動機づけ方略を設計しテストする際には、どのような動機づけの効果が望ま れているかを明確にし、相応する目標を書いておくべきである.一般的な情意的反応も参考にはなるが、動機づけ目標も同時に設定できる.少し例を挙げ れば、持続性が増す、持続性が一定のレベルを保つ、自信がもっとつく、関連 性を自覚できる、興奮の度合いが増す、あるいは、課題に自主的に取り組む(持続的な動機づけ、Maehr,1976)などがある.

 場合によっては、学習成果に顕著な伸びが見られないままに、動機づけ、特 に継続的な動機づけが向上することがある.目標準拠テストでは、動機づけの 重要な側面や、長期的な学習の成果は測定できないかもしれない。従って、動 機づけの問題を扱う際、特に実験の中や妥当性を検討する場合などでは、学習 目標に加えて、望まれる動機づけの行動を明確に述べた動機づけ目標を持つの が最善策である.
 
学習者集団の分析

 第二の関心事は、学習者集団を分析することである.授業の魅力を高めるた めに創造的な方略を組み込む可能性は、無限に広がっている.動機づけの主要 因のモデルに基づいて学習者集団を分析することで、どのタイプの方略をいく つ用いればよいかという疑問に答えることができる.ARCSモデルを使う際 には、学習者集団のプロフィールを設計者が調べる.この過程は、厳密な測定 の手続きでもあり得るし、一方で、設計者の学習者に関する知識に基づく略式 の裁断かも知れない。

 例えば、もし対象となる学習者集団の中の生徒の多くが、与えられた課題 を学ぶ必要性がとても高く、さらに、課題をこなす能力があると思っていると すれば、関連性と自信の方略は、余り多く必要でない.注意と満足に関しても、 時折彼らの注意を促す方略と、成し遂げた物の内発的な満足感を維持するため の方略が、少しづつ要るだけであろう.これとは対照的に、もしコンピュータ の経験があまりない学習者がCAIの最初のレッスンを開始するのであれば、 自信をつけさせるために普通より「親しみ易い」フログラムを同意する必要が あろう.これらの例でもわかるように、動機づけ要素の付加がどの点で最も強 調されるべきか、そして、並の動機づけでいいのか重点的な動機づけが要求さ れているのかなどは、事前に決めることが可能である.ARCSモデルの四つ の因子を用いることで、コースウェアを設計する際にどの領域が強調されるべ きかを決断することが容易になる.
 

「動機づけ」と「精紳衛生」

 第三の問題点は、動機づけ方略の持つ「動機づけ」特性と、「精神衛生上の」 特性についてである.ヘルツバーグ(Hertzburg.1986)が一般的な意味で確 立したこの概念を使うと、コースウェア設計の特徴の中で、上手に用いられて いないと利用者をいらだたせたり意欲を殺すけれど、上手に用いられていたと しても一向に学習意欲を高めないものが指摘できる.例えば、プログラムの始 めにある長いアニメーショングラフィックスを為すすぺもなくただじっと座っ て見ているのは、一度や二度はともかくとして、とてもいらいらするものであ る.また、サブルーチンを呼ぶために何度となくディスクにアクセスするプロ グラムも侍っていていらだつものである.こんないらだちはそのソフトウェア を使って学習をする意欲を低下させる.ソフトウェア評価の基準にはこの手の 「精神衝生上の」因子がしばしば含まれているが、これらの特徴に関して高得 点を取ったからといって、このディスクに含まれているレッスンを勉強してみ たいという意欲が涌くという意味ではない.学びたいという意欲は、授業の内 容と方法に直結した特性によって高められるものである.次の節では、ARC Sモデルの四つの部分のそれぞれに属する方略について述べていく.「精紳衛 生上の」方略は含まれるが、「動機づけ」方略に力点を置く.
 
 

動機づけ方略

 

 前節で述べたように、ARCSモデルは四つの変数のカテゴリーからなって おり、学習者の動機づけプロフィールを作ったり、動機づけ目標を作成するな どの動機づけ設計の過程で用いられる.ARCSモデルのもう一つの主要機能 は、動機づけ方略を考え出す手助けになることである.

 現時点に於いては、ARCSモデルの主要なカテゴリーのそれぞれに、三つ ずつの下位カテゴリーが設けられている(図16.2),このモデルがどのように 導き出され検証の手続きを経て来たかについては、以前の論文に報告されてい る(Ke11er.1979).この作業と、コップ(Kopp.1982,1983)、ケラーとコッ プ(Keller&Kopp,1987)、マローン(Malone.1981)、マッコムス,(McCombs.1984)、そして、ウォドコフスキー(1985)らの研究をもとにして、更に、 方略の下位カテゴリーに修正を加えたり この節では、それぞれの方略を簡単に 概観して、それがコースウェア設計にどのように応用できるかを示す.
 

注意のカテゴリー(A)

方略A−1: 知覚的喚起(perceptual arousal)
生徒の注意を引き、それを持涜するために、新規な、驚きのある、 調和しない、あるいは、不確かな事象を授業に用いる.

 これは、大まかに言って、バーレイン(Berlyne.1965)の「知覚的好奇心 (pereeptual curiosity)」の概念と同じで、ヘップ(Hebb.1955)によって 定義された指向性反射(orienting reflex)を起こさせることである.人間は、 環境に起こる予期しない刺激に対して、容易に、時には自動的にも、反応する. このレベルでの注意を引くために、コンピュータの視覚的あるいは聴覚的な性 能は、特に効果的である.アニメーション、文字の反転、点滅、音響効果など は、どれも効果の上がる注意喚起の技法である。その他にも、何かのリストを スクリーンの左下から段々に右上の方へ出していくなど、見慣れない方法で情 報を提示するのも有効である.
 

図16.2 ARCSモデルの動機づけ設計方略の下位カテゴリー
注意 A−1:知覚的喚起 
A−2:探究心の喚起 
A−3:変化性
関連性 R−1:親しみ易さ 
R−2:目的指向性 
R−3:動機との一致
自信 C−1:学習要求 
C−2:成功の機会 
C−3:コントロールの個人化
満足 S−1:自然の結果 
S−2:肯定的な結果 
S−3:公平さ
 
図16.3 視覚的な効果の付加
視覚的な効果の付加(図16.3)

 図16.3の二つの画面は、文字点滅、音響、そして、アニメーションの効果的 を使用例の前後を示す.ギルドマスター・シリーズ(注1)からのこの「繰り 上げ」のソフトの例では、繰り上げられる数が一旦点滅して、十の位の上の新 しい位置に、画面上を回りながら動いていく.動く時には、プッブッブッとい う音が付けられている.

 風変わりな内容もまた注意を喚起する.矛盾していると思われやすい二つの 事実を提示したり、ほとんどの人の体験と矛盾することや、奇怪なことを示す のも注意を引く.例えば、「世界の七不思議:信じるか信じないか」などの本 や、聞き慣れない統計的事実は、常に若者に人気がある.

 このカテゴリーについて大切な警告は、邪魔をする恐れのある注意喚起の技 法を避ける、ということである.語が一つ画面上に点滅していると、ほかの部 分に集中することが、大変困難になる,注意を引くためのアニメーションを加 えるのはよいが、時間がかかるもので、ただ座って終わるのを待っているしか 選択の余地が無いような場合、いらいらするものになりかねない.
 

方略A−2:探求心の喚起(inquiry arousal)
情報を求める行動を刺激するために、質問をしたり、問題を学習者 に作らせたりする.

 サックマン(Suchnan,1966)や他の研究者は、学習者に質問を作らせたり、 その質問に答えるための問題解決の活動を編み出させたりすることが、動機づ けの効果があることを立証している.このカテゴリーは、パーライン(1965) の「認識レベルの好奇心」に似ており、つまり、情報探索行動や問題解決行動 に帰結するタイプの好奇心を意味する.知覚的な喚起によって注意を引いたら、 次こ調べてみようとする気持ちにさせることで、もっと深いレベルでの好奇心 を活性化できる.

 ほかの様々なメディアの場合と違って、コンピュータを用いる場合特に効果 的に出来ることがたくさんある.例えば、コンピュータの言葉やグラフィック スを使ったアドベンチャー・ゲームの人気が高いが、これは、問題解決の場面 をミステリーの雰囲気の中で提示することが学習者の好奇心を刺激する可能性 があることを物語っている.問題解決場面での怪しげをミステリーの雰囲気は、 情報があるということは示唆されているものの視界からは隠されていて、しか も、条件を有利に導けば隠された情報が得られるという約束がある時に作り出 すことができる(Kaplan.1973:Kaplan&Kaplan.1978).文学や演劇で使 われる兆候の技法、あるいは、森の中へ消えていく一本の道を描くグラフィッ クスによって、ミステリーの感じを醸し出すことができるだろう。

 授業の場面では、段々と新しい知識を加えながら、問題解決活動を続けるこ とで、最終的な答えに学習者を導いていくが可能である.グラフィックスやア ニメーションを加えることで、学習者が一続きの舞台場面や状況の中を「動い て」いけるようになる.

 もっと簡単なレベルとして、質問−反応−フイードバックの交互作用を伴い ながら、学習者に単なる言葉の上での丸暗記でなしに能動的に考えることを要 求する.学習者に自分で解く問題を自分で作らせることによっても調へてみよ うという態度を刺激するコースウェアになる.一例としては、科学実験で、生 徒に変数と量とを選択させて、コンピュータが結果を提示する方法がある.
 

方略A−3: 変化性(variability)
授業の要素を変化させることで、生徒の興味を維持する.

 厳密に理論的な見地からは、変化性は知覚的喚起(方略A−3)に多分含ま れるであろう.しかし、実際的な理由によって、別のカテゴリーとして設けて ある.知覚的喚起の主因子、例えば新規さは、何か新しく「受けそうな」、ひ いては恐らく一過的なものを示唆する.変化性とは、どちらかと言えば、授業 事象(Gagne.1985)の連なりの中の時折の変化や、情報の楕成や提示の方法 に関する他の側面を指す.

 CAIでは、ソフトの区切り短く置き、情報の提示と相互作何のあるスクリ ーンを混ぜるのが一番良い.画面構成には、ある一定のパターンがあるべきだ が、時折それを変化させる。また、視覚的や聴覚的を付加物は、控え目こ、そ して、機能的に使う.人間は変化性を好む反面、安定性や組織性を感じている ことも好きである,それゆえに、多すぎる変化性は、足りないのと同様に良く ないことであり、特にそれが、授業の内容か気を放らすようでは、仕方ない.
 「繰り上がり」のソフトでは、チュートリアル部分に変化性がある.例を示 す画面の後に相互作用の画面が続き、特徴のあるフォーマットがそれぞれに取 られている.チュートリアル部分の終わりでは、学習者が心地よい変化を体験 できるように、城の一室を描いた三次元のグラフィックスが画面に現れ、質問 とメニューがその上に示される(団16.4).
 

図16.4 チュートリアル後のメニュー画面
この例は、ルネッサンス学習システム製作の「繰り上がり」ソフトから(著作権1985年)
チュ−トリアル後の画面(図16.4)

 図16.3と図16.4に見られるように、エンキーという名の人物漫画がソフト全 体を通じて時折登場する.チュートリアル部分とゲーム部分の様々な段階で、 エンキーが連続性と安定性を加えている,機能的な統合という点から見れぼ教 えられている数学の技能とエンキーとは機能的に関連しているわけではないが、 ギルドというシリーズの統一テーマに貢献しており、魔法使いに見えるエンキ ーは、注意を維持するのにも役立っている.
 

関連性のカテゴリー(R)

方略R−1:親しみ易さ(Familiarity)
具体的な用語や学習者の経験や価値観に関連している例や概念を用いる.

 人間は適量の奇妙なあるいは予期しない出来事を好むが、ある程度の親しみ 易さを既に持っているものや具体的なイメージを通して関連づけることができ るものなどに相性が良いと感じるものである.例えば、人類一般の記述などよ りも、ある特定の人についての話を好むし、既に知っていることについてもっ と聞いてみたいとも思う.これは、人々が趣味や特技を持つ訳の一つであり、 論争になっている話題で自分と同じ考えを代表する話し手を選んで聞く理由を 説明するものでもある.

 コースウェアでは、生徒の名前を聞き出すのに一人称を使ったり、人称代名 詞や生徒の名前を使い続けることは、教材を「友好的に」そして親しみ易くす るのに役立つ.図16.3と図16.4にも生徒の名前と人称代名詞が使われているこ とに注意して欲しい.この程度の擬人化さえも、一部の人には「不自然なもく ろみ」と見なされるかもしれないが、このやり方に対して殆どの人は肯定的に 反応しているようである.コンピュータが個々の記録をつけて学習履歴を参照 できる場合は更に効果的である.

 空想の人物ではあるが、「繰り上がり」ソフトの魔法使い(図16.3と図16.4) で予定された年齢集団(六歳から十歳)向けの親しみ易さの要素が加えられる. 代用教師のような人物として、活躍する.時に、画面上の特定の物を指したり、 正答や誤答に対するフィードパックを与える時に表情を変えたりする.

 グラフィックスによる図解やアニメーションを用いることでも、抽象約な概 念や未知の概念を親しみのある状況にはめ込むことができる.場合によっては、 授業で用いる例を様々なコンテキストに当てはめることも可能である.例えば、 数学的な性質という点では同じ内容の文章問題を、縫い物や力学、地学、文学、 あるいは、音楽等のコンテキストに当てはめ、その中から学習者に選ばせるこ ともできる.ロス(Ross,1983)は、学生の専攻分野に関連したコンテキスト を使って統計学の概念を教えた場合、学生達の学習意欲がより高く、より効果 的な学習がもたらされることを見いだした.
 

方略R−2: 目的指向性(Goal Orientltion)
授業の目標や有効性を示す文章や例を用意し、達成目的を提示するか学習者に目的を決めさせる.

 人間はその行動において目的的(purposive,Tolman.1949)である傾向が ある.もし、どこに向かっているのか知っていて、何故そこに向かっているの か理由が解れば、もっとそこに行きたいと思うであろうし、そのために努力す るであろう.これは、動機づけに最も広く用いられる方法である.強く望む目 的があることで人の行動が強く左右されるのは、衆知の事実である.時として、 目的指向性を刺激することはいたって簡単である.学習目標と一緒に単元の重 要性や有用性という意味で目的を明確化することで、焦点の合った目的指向性 を持たせることができる.

 しかし、生徒が学習の状況と結び付けることができるようを実利的な目的を 作るのはしばしば困難である.単語練習や三角関数の勉強は、おおよその青年 にとっての目的から遠く掛け離れたものに感じられる.このような状況では、 ゲームやシミュレーションやその他の活動によって意味のある目的指向性を提 供できる.ゲームやシミュレーションには、学習者に目的感を与える組み込ま れたゴールがある。ゲームは特に、退屈なドリル演習型のコースウェアに関連 性を付加するのに効果的である.シミュレーションは、現実の状況やプロセス に基づいているため、より効果的なレベルで関連性を与えることができる.

 複数の目的の中で学習者に選択の自由を与えることもできる.必須でないゲ ームを選んだりあるいは飛ばしたりすることが許可されたり、前述のように(方 略R−1)例題の教科を選べることで、生徒はより強く目的指向性を育てるこ とができる.

 目的指向性を引き起こす今一つの方法としては、ある技能を必要とするゲー ムなりシミュレーションに参加するのに、その技能を学習するための活動を前提 条件にする方法がある(Keller,1979).この方略は、「繰り上がり」ソフ トの序の部分の一面面で例示されている(図16.5).チュートリアル部分で教 えられている技能を習熟するまでは、「スピード・ゲーム」へのアクセスがで きないようになっている.
 

図16.5 目的の記述
この例はルネッサンス学習システムの「繰り上がり」ソフトより(著作権1985年)
目的の記述(図16.5)
 

方略R−3: 動機との一致(Motive Matching)
生徒の動因プロフィールに合った教授方略を使う.

 授業の方法や過程という側面が関連性に影響を持ちうる.例えば、授業内容 の有用性とは無関係に成績の良い生徒を動機づけるには、学習者が学習の水準 を決定できたり、成功への責任を個人的に負えるような状態を作ったり、ある いは、目標達成への進行状祝に関して頻繁にフィードバックを与えたりする教 授方略を採っているならば比較的に容易である.CAIのコースウェアで学習 者に難易度に差のある目標の中から選ばせたり、得点をつけたり、あるいは、 出来具合いをフィードバックしたりすることで、達成動機を刺激することがで きる.ゲームにはこれらの特徴が普通備わっており、多くのタイプのコースウェ アにゲームを組み込むことができる.

 ところが、依存動機の高い人は、競争が無く協同的な場面を好むものである. 従って、選択可能なものとしてでなく、競争的なゲームに参加することが「必 修である」コースウェアは、一部の生徒の意欲を損ねることになる.あるソフ トに二人や三人で取り組むというオフションも設定可能であろう.これを簡単 に取り入れるには、まずそれぞれの生徒の名前を聞いて、例えば、「選択肢に ついて話し合って、意見を一致させてから答えをいれなさい.」と指示するな ど、一人でなく複数の生徒による入力を要求したりすればよい.もっと複雑 なレベルでは、コンピュータが複数個の答えを受け取って、それを比較して、 個別に、そしてグループに対して、フィードバックを与えることもできよう.

 この方略において重要な点は、授業の結果という側面が動機づけを与えるこ とに加えて、教授方略や教室の環境などといった授業の過程に関ある因子も動 機づけに影響を及ぼすということである.

 関連性という話題を離れる前に、二三のコメントを特に述べておきたい,ゲ ームやシミュレーション、あるいは空想までもが、関連性の感覚を高める手法 として用いられるが、これらの手法には、他の多くの動機づけ方略が混在して いる.オーバック(Orbaeh,1980)は、ゲームやシミュレーションの持つ動機 づけ特性のうちの幾つかを報告しており、マローン(1981)は、少なくとも実 験に参加した男の子には、算数のドリルに組み込まれた市販タイプのゲーム(ダ ーツ)が魅力的であったとしている.マローンはこれを空想(ファンタジー) と呼んだが、彼の用語の使い方は、本論の文脈での使い方と若干異なる.

 学習者集団に示された作られた状況を指すために用いられた場合、空想(ファ ンタジー)という言葉は、現実から故意に遊離した事象、過程、あるいは状況 を表すもので、偽りの生物のアニメーションや、城の土牢や竜の出てくる冒険 や、サイエンス・フィクションの幾つかのジャンルなどで使われている.これ らの空想の要素のいづれかを用いれば、学習者が想像的にある役を演じ、現実 の世界で生き残りや成功に必要な活動を行える小世界を作り出すことができる. 空想には、ゲームの特徴が含まれるかも知れないが、シミュレーションのよう に創案された状況をも有しており、ゲームを越えるものである.この手法によっ て、かなり高いレベルでの関連性を感じさせることができる.

 刺激材料を描写することから離れて学習者の行動を見ると、ゲーム、シミュ レーション、そして空想の手法は、すべて空想行動を促進する.これらの道具 立てによって、学習者は想像的な空想飛行に飛び立ち易くなり、満たすべき役 割を生み出していき易くなる.この理由によって、これらの3つの手法がすべ. て関連性の項の中で述べられているが、通常、他の動機づけ方略も同時に用い られている.うまく設計されたシミュレーションや空想アドベンチャーには、 ARCSモデルの殆どすべての方略が具体化されており、従って、幾つかの異 なるカテゴリーの下で論じられている.

 このことは、ゲームやシミュレーション、あるいはファンタジーは、単に一 元的な動機づけの道具であるとはとらえられず、むしろ、動機づけ要素のすべ. てを考慮して設計し、利用するべき複雑な方略であることを意味する.動機づ け方略全部について言えることだが、これらの方略を用いるに当たっては、方 略を用いることで得られる利益を開発コストの増加や学習時間の増加などを考 慮してバランスをとり、動機づけのための道具そのものが目当てになり、学習目標から注意を反らす可能性があることも十分に検討することが重要である.
 

自信のカテゴリー(C)

方略C−1: 学習要求(Lerning Requirement)
生徒が成功の確率を予測できるように、できるようにならなければ いけないことは何かを示し、評価の規準を提示する.

 単に学習目標を意識させるという行為でも、評価の規準や評価される時の条 件等を含むことで学習者の自信を育む手助けとなる.学習者が何が起こるのか を知っている場合は、テストキ評価の過程があいまいさに包まれている場合よ り、成功する度合いを予測することに自信が持てる.この原理は授業過程にも 当てはまるものである.もし授業が、言葉使いや内部の矛盾、あるいは不適切 な練習問題等によって生徒の混乱を招けば、学ぶ機会は減り、成功できるとい う自信もまた減ってしまう.

 コースウェアの中での学習要求を明確にする方法は幾つかある.第一には、 目標とソフトの構造をはっきりと示すことである.第二に、評価の規準を説明 して、フイードバック付きの練習の機会を与えること.第三に、課題を達成す るために役立つ前提の知識、技能、あるいは態度について言及すること.最後 に、テストや練習に何題の質問があるかを学習者に知らせること.このような ちょっとした情報が、学習要求を予期する手助けになる.

 多くのソフトにこれらのうちの一つやこつは含まれているが、必ずしも具体 的であるとは限らない.「繰り上がり」ソフトには、良い例が示されている. 問題練習を始める直前に、エンキーが「スピード・ドームに進むためには、10 問中8間以上正解でなけれはなりません.」と生徒に言う.
 

方略C−2: 成功の機会(Success Opportunities)
学習中と学習後の双方の条件において、有意味な成功の体験ができ るような挑戦レベルを提供する.

 挑戦ということを考えるとき、学習中の条件と学習成立後の練習時の条件を 区別する必要がある.例えば、達成意欲の高い人は中程度のリスクを好み、マ ローン(1981)は不確実な結果や偶発性、あるいは難易度が変えられること等 を挑戦と結び付けて用いている.これらの特徴は、学習中よりもむしろ練習の 条件としてより適切であると思われる.

 人々が新しい知識や技能を学んでいるときは、普通、成功できるという保証 がかなり高く、課題を達成できるという意味で努力が報われることを望むもの である.もし、大きすぎる犠牲を払わなければ成功できないことが解れば、そ の特定の活動に非常に強く動機づけられていない限り、他の活動に移ってしま いがちなものである.社会科より数学がいいとかトランペットよりギターが好 きだとかいう場合、少なくとも部分的には、一つよりもう一つの方が簡単だと 知っていることを反映する.コースウェア設計では、チュートリアルの部分や 練習の始めの部分は簡単なものから難しいものへと内容や問題が流れるように 組織し、連続した(100%の)強化スケジュールを与える.これは、オペラ ント条件付けのシェービングの概念にとてもよく似ている.このように配列す ることで、生徒達は成功の機会を得ることになり、その成功の機会はあらゆる 種類の情意的を学習を左右する条件であることが指摘されている(Martin & Briggs,1985).

 学力の低い方の学習者にとっての適度の挑戦を避け、そしてより学力の高い 者が退屈するのを防ぐためには、前提となる知識や技能の差に応じた学習を要 求する教授管理上の方略を用いる.もしあるソフトを使う人達の間に学習開始 時の知識に大きく開きがあるときは、事前テストを実施し、授業連程に複数の 開始地点を設ける.

 ある技能や知識領域である程度の習熟を達成した後は、競争や他の不確実さ によって活気づくものである.だから、ゲームの要素がドリル演習型のソフト ゃシミュレーションやファンタジーの中で動機づけの契機になり得る.ゲーム 参加者に益や害をもたらす偶発的な出来事を組み込むことで制御することが不 可能な挑戦の要素が加えられるが、最終的には技能履行の影響を打ち消さない 程度に押さえられているべきである.

 難易度は、時計を加えて反応時間を短くしたり、刺激の提示速度を変えたり、 状況の複雑さを変えたりする等、様々な特徴を駆使してコントロールすること ができる.このような要素を学習後の練習に加えることによって、学習者個々 が個人的に有意味な挑戦レベルを設定したり、自信や自負心を築き上げること ができる.
 

方略C−3: コントロールの個人化(Personal Control)
 コントロールの機会とフィードバックを与えて、成功の原因を自分自身に帰すること(internal attrribution)を援助する.

 成功すること自体は、必ずしも自信や自負心を高めるとは限らず、特に、成功の原因が幸運や課題の安易さにあると考える場合はそうである(Weiner.1980).学習の実行状態をフイードバックする評価やフィードバックの方法や、コースウェアの要素に対する生徒個々のコントロールによって、成功の原因が自分自身にあるという考え、つまり、成功の内的帰因(internal attrribution for sueeess)を育てる手助けができる.この内的帰因は、能力か努力かが成功の原因と考えることになるが、これによって、自信や自負心を築き上げることができる.

 しかしながら、学習状況での全部のコントロールを握ることは、逆に全くコントロールを持たないのと同種に、大変恐ろしいかいらいらすることであり、学習意欲を失わせることにもなりかねない.メリル(Merrill, 1975)は、授業事象の順序を組み立てていくコントロールを完全に任せることは、学習を向上させなかったし、動機づけにも寄与しなかったことを見いだした.しかし、ある程度のコントロールを与えることで、いらだたしさを解消し、自信をつけさせることができる.

 コースウェアで、逃れることができないある部分に閉じ込められることを不愉快に思う人は多い.いつでも一ページずつ前に戻ることができたり、メニューに戻るために抜け出すことができるのが最も望ましい.学習のペースについては学習者がコントロールするべきである.次の画面に進むためにどれかのキー、あるいは指定されたキーをたたくようになっているのは、この種の学習者制御を与えるために普通用いちれる方法である.最後に、コースウェアを作動したらすぐにメニューヘのアクセスを与えるのが望ましい.あるソフトに親しんだ後、長い前置きをやり過ごす為に座っていなけれはならないのはやる気を失わせる.これらの要素はすべて精神衛生上のもので、つまり、学習者がいらだつのを防ぐための注意である.

 学習意欲は、むしろ、コースウェアの色々な部分にアクセスできたり、難易度を選択したりすることで高められる.メニュー機能を駆使した構造はこの点で理想的である.学習意欲の高い生徒は、授業設計者が考えるのと異なる時点で、あるいは異なる順序でチュートリアル部分からドリル演習部分へ移りたいかも知れない.また、個人的に満足のできる挑戦レベルで取り組んでいる時には、さらに学習意欲が高まるかも知れない.このような選択の余地を与えることで、ある生徒は学習意欲を高めるであろうし、他の生徒にとっては学習意欲を築く契機にもなるであろう.

 最後に、成果を生徒の努力と学力に帰因することを助長する語句を用いること.この点は、生徒に考えてもらいたいようなことを書くことで達成できる.例えば、図16.4の最初の選択肢は、生徒の言葉で書かれている.「自分自身」という言葉を入れることで、この語句を個人化して、生徒の努力に力点を置くのに驚くべき違いがある.

 また、成功することが不可能な時点で、その課題を続けてやらせないこと.ソフトの中には、与えられた数の問題を次々にやらせる部分で、半分も行かないうちに合格するには多すぎる誤りをすでに犯してしまっているにもかかわらず最後まで続けることを強いるものがある.合格点を取れなくなった時点で自動的にこの練習を打ち切ることでこの問題は解決できる.例えば、「繰り上がり」のソフトでは、10問中8問で合格である,3問間違った途端に練習は中断され、生徒はもう一度やり直すように励まされている.

満足のカテゴリー(S)

方略S−1: 自然の結果(Natural consequenees)
 現実のあるいは現実に似た状況で、新しく習得した知識や技能を使う機会を与える.

 内発的な学習意欲を高め、あるいは維持するための最良の方法の一つは、新しく習得した知識や技能を意味のある形で使う機会を与えることである.もしこのことが仕事や趣味やその他の個人的に満足できる活動の中で達成できないのならば、ゲームやシミュレーション、事例研究、あるいはロールプレイ等の形で実現できよう.このような活動は、示される条件や要求される知識・技能などの点で、実際の応用場面ととても近いものになり得る.想像力や空想を働かせることで、学習者はシミュレーションの世界へ「足を踏み入れる」ことができる.

 これらの方法は、関連性を高めるために学習の過程で用いられた時と大きく異なるものではない.違いはむしろ方法よりも目指す所にある.関連性の意識を確立しようとする時は、学習目標の有用性を見ることができるようにこれらの方略が使われる.満足感を生み、維持する時には、初期の学習体験の後で意味のある応用の機会を与えるべく用いられる。従って、前もって学んだ技能を応用するゲームやシミュレーションを最も効果的に用いるには、授業の最後の部分として組み込み(満足の方略)、そのゲームやシミュレーションのことをコースウェアの冒頭で生徒に知らせる(関連性の方略)方法であろう.

 この方法は「繰り上がり」ソフトの中で取り入れられている.合格点に達した後与えられるメニューには、追加の例題か練習問題か、あるいはスピード・ゲームを始めるかの選択が含まれている.
 

方略S−2: 肯定的な結果(Positive Consequences)
 望まれる行動を維持するように、フィードバックや強化を与える.

 この方略は、成功に対して、肯定的な動機づけのためのフィードバックや報酬を与えることを指す.普通、新しい技能を習得する過程においては成功の度に連続して施され、それ以後は間隔をあけて与えられる.チュートリアル部分では各反応の後にフィードバックを与え、練習問題では一連の解答の後にまとめて与えることで、この方略を十分満たす.

 矯正的なフィードバックに対して、動機づけのためのフィードバックは、「正解」のような簡単な肯定的確認や、あるいは「すごいぞ!」のようなもっと熱烈なものかも知れない.しかし、時として、やりすぎる場合がある.「これは素晴らしい! とても良くできました!!」などというメッセージを使っても、もし学習者が問題がいささか簡単であると感じている時には何等動機づけの効力はない。むしろ、ソフトウェアの他の面の動機づけの効果を薄くしてしまうかもしれない.

 例えば、「繰り上がり」のソフトでは、正解にはエンキーがただほほ笑み、生徒は結果を得点表の上で見る.誤答に対しては、ヒントと矯正的なフィードバックが与えられる.合格点に達成した時は、大変良くできましたというほめ言葉が生徒に示されるだけである.

 コースウェアの設計にあたっては、風船が矢で打ち抜かれたり、列車に車両が加えられたり、あるいは登場人物が上下にジャンプして手を振って笑ったり、いわゆる外的な報酬を含むこともある.時として、誤答に対する報酬の効果が正答のそれを上回ることがある.例えば、大砲が画面の縁から引きずり出されて弾を放ち、誤答にぶつかって爆発して消えるなどというものである.明らかに、誤答に対する報酬は決して正答に対するそれを上回ってはいけない.外的な報酬は授業そのものより面白くなる危険性を常にはらんでいるので、思慮分別をもって使うのが最善策である.

 外的な報酬には代償がつき物なので、時と場合によっては、外的な報酬に邪魔度されたくないと思うこともある.代償とは、報酬が提示されている間の待ち時間である.それ故に、状況に外的なコントロールの要素が加わることになる.学習活動自体によって内発的に動機づけられている人は、操られているとか、コントロールされていると感じることを好まないし(Condry,1977)、学習活動が外的な報酬を得る為の手段であるとは思いたくない.この種の人達には、適切な時点で称賛の言葉を与えることで達成したことを認めてあげたり、また、自分自身を向上させる手助けになる有益なフィードバックを与えることが好まれる.結果として、学習者によっては、外的な報酬一式をオプションとして使用者が選べる形態を取るのがよいかもしれない.報酬の新規さが擦り減るまでそれを選んで使い、後は除外してしまえるように.

このことが仕事や趣味やその他の個人的に満足できる活動の中で達成できないのならば、ゲームやシミュレーション、事例研究、あるいはロールプレイ等の形で実現できよう.このような活動は、示される条件や要求される知識・技能などの点で、実際の応用場面ととても近いものになり得る.想像力や空想を働かせることで、学習者はシミュレーションの世界へ「足を踏み入れる」ことができる.

 これらの方法は、関連性を高めるために学習の過程で用いられた時と大きく異なるものではない.違いはむしろ方法よりも目指す所にある.関連性の意識を確立しようとする時は、学習目標の有用性を見ることができるようにこれらの方略が使われる.満足感を生み、維持する時には、初期の学習体験の後で意味のある応用の機会を与えるべく用いられる。従って、前もって学んだ技能を応用するゲームやシミュレーションを最も効果的に用いるには、授業の最後の部分として組み込み(満足の方略)、そのゲームやシミュレーションのことをコースウェアの冒頭で生徒に知らせる(関連性の方略)方法であろう.

 この方法は「繰り上がり」ソフトの中で取り入れられている.合格点に達した後与えられるメニューには、追加の例題か練習問題か、あるいはスピード・ゲームを始めるかの選択が含まれている.
 

方略S−2: 肯定的な結果(Positive Consequences)
 望まれる行動を維持するように、フィードバックや強化を与える.

 この方略は、成功に対して、肯定的な動機づけのためのフィードバックや報酬を与えることを指す.普通、新しい技能を習得する過程においては成功の度に連続して施され、それ以後は間隔をあけて与えられる.チュートリアル部分では各反応の後にフィードバックを与え、練習問題では一連の解答の後にまとめて与えることで、この方略を十分満たす.

 矯正的なフィードバックに対して、動機づけのためのフィードバックは、「正解」のような簡単な肯定的確認や、あるいは「すごいぞ!」のようなもっと熱烈なものかも知れない.しかし、時として、やりすぎる場合がある.「これは素晴らしい! とても良くできました!!」などというメッセージを使っても、もし学習者が問題がいささか簡単であると感じている時には何等動機づけの効力はない。むしろ、ソフトウェアの他の面の動機づけの効果を薄くしてしまうかもしれない.

 例えば、「繰り上がり」のソフトでは、正解にはエンキーがただほほ笑み、生徒は結果を得点表の上で見る.誤答に対しては、ヒントと矯正的なフィードバックが与えられる.合格点に達成した時は、大変良くできましたというほめ言葉が生徒に示されるだけである.

 コースウェアの設計にあたっては、風船が矢で打ち抜かれたり、列車に車両が加えられたり、あるいは登場人物が上下にジャンプして手を振って笑ったり、いわゆる外的な報酬を含むこともある.時として、誤答に対する報酬の効果が正答のそれを上回ることがある.例えば、大砲が画面の縁から引きずり出されて弾を放ち、誤答にぶつかって爆発して消えるなどというものである.明らかに、誤答に対する報酬は決して正答に対するそれを上回ってはいけない.外的な報酬は授業そのものより面白くなる危険性を常にはらんでいるので、思慮分別をもって使うのが最善策である.

 外的な報酬には代償がつき物なので、時と場合によっては、外的な報酬に邪魔度されたくないと思うこともある.代償とは、報酬が提示されている間の待ち時間である.それ故に、状況に外的なコントロールの要素が加わることになる.学習活動自体によって内発的に動機づけられている人は、操られているとか、コントロールされていると感じることを好まないし(Condry,1977)、学習活動が外的な報酬を得る為の手段であるとは思いたくない.この種の人達には、適切な時点で称賛の言葉を与えることで達成したことを認めてあげたり、また、自分自身を向上させる手助けになる有益なフィードバックを与えることが好まれる.結果として、学習者によっては、外的な報酬一式をオプションとして使用者が選べる形態を取るのがよいかもしれない.報酬の新規さが擦り減るまでそれを選んで使い、後は除外してしまえるように.

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ARCSをコースウェアに応用するには

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1.タイトル画面

 タイトル画面では、コースウェアの内容が極めて凝縮された形で紹介されており、著作権、著者、あるいはコースウェアの短い解説等の情報も含むかも知れない.時として、タイトル画面にはコースウェアの他のどの部分よりも凝ったグラフィックス、あるいはアニメーションが使われる.

 動機づけ設計の観点からは、生徒がまず最初に見る画面であるという点で、タイトル画面はとても意味深い.どんなに少なくとも、タイトル画面の注意を喚起する特性によって、知覚的喚起(A−1)を刺激したいし、生徒の情報収集行動(A−2:探求心の喚起)を刺激できればなお良い.グラフィックスは 注意を引くのに有用な道具であり、きらびやかである必要はない.しかし、一般的には、コースウェアの内容に関連しているべきである.

 「リーダーシップ」のコースウェアは、カラーとグラフィックスの持ち味を活かして、タイトルを見せる画面から始まる(図16.7).カラーの肉太活字を作り出す為の、高解像度でも低解像度でもできるこの方法は、テキスト・モードで普通サイズの文字をタイトルに使うよりも、生徒の注意を引くのにより効果的である.アニメーションや人間のモデル等のより凝ったグラフイックスもタイトル画面に加えることはできるが、このコースウェアの利用者である大学生年代の学習者には、必要ないと思われる.

低解像度のグラフィックス例(図16.7)
図16.7.タイトルに用いられた低解像度のグラフィックス
 
2.導入部分

 コンピュータのコースウェアに最終学習目標を述べた導入の画面を含めることは当たり前になった.このことは、生徒が授業の目的達成に必要な情報に集中することの助けになるはずである.生徒が何を達成しなければならないかを知っているのだから、目的に達した時、達成したということが直ちに知らされることにもなる.導入部分に含まれているかも知れない他の情報には、コースウェアの概観、使い方の説明、対象となる利用者の記述、扱われている内容を学習することの重要性等がある.

 導入部分での動機づけ上の主な関心事は、関連性を確立することにある.生徒の注意を引いた後では、コースウェアが「私が使うためのもの」であると感じることが肝要である.この感覚は、コースウェアの内容が身近に感じられたり(R−1:親しみ易さ)、大切だと思われたり(R−2:目的指向性)した時に得られるであろう。従って、目標の記述は、具体的な用語を用いて、生徒が簡単に理解できるようにしなければならない.生徒の言葉を使って例を二三加えることは、導入部分の関連性を高く感じさせることに役立つであろう.

 目的を記述することだけで十分に関連性を確立できる場合もあるが、コースウェアがどうして重要なのかを文章ではっきりと示すことも関連性が高いと感じさせるのに寄与するかも知れない.対象となる技能や知識の有用性が明らかでない場合、あるいは学習課題そのものが愉快でないような場合には、目的を達成することがどのように以後の学習や将来の職業に結び付いているかをはっきりと述べておくべきである.「分数を小数に直せることは、次回の文章問題を解くために必要なことです」というような簡単な叙述で、分数と小数との変換の課題が生徒にとってもっと重要なものとして受け取られる手助けになるかもしれない.

 目標の記述に加えて、対象となる学習者集団の説明には、動機づけ特性、とりわけ自信を育てるという点から、特別な注意を払う必要がある.対象となる学習者集団の説明(例えば、学年とか前提となる能力等)を読んだとき、もし自分がそのカテゴリーに合致している場合、その生徒の自信を強めることができる.対象者の説明に、「前の課題を完成したのだから、この課題も難無くこなせるはずです.」などと付け加えれば、コースウェアで成功できるという予測を立てること(C−1:学習要求)を促せよう.前提とされている教材範囲を復習する部分をオプションに持つことでも学習者の自信を強め、新しいゴールがより簡単に、そして達成できそうに思えてくるだろう.

 図16.8に見られるように、「リーダーシップ」のコースウェアでは、リーダーシップの概念が「成功への鍵」として導入されている.「READY...」の所で短い間が置かれた後、遅目の表示速度で「リーダーシップは成功への鍵!」という歌い文句が表示される.この画面の終りで生徒が次へ進むためにキーを一つたたくと、歌い文句の内の最後の行だけを残してすべての文字が消される.これは、使える限りの多様な注意喚起の技法を用いた良い例である.また、リーダーシップの型を学ぶことと「成功」とを結び付けて、関連性を高める工夫でもある.画面の見出しにはこのことが生徒が学ぶことの中で最も重要な点であると述べて、関連性を更に高めている.
 

注意喚起の技法例(図16.8)
図16.8. 導入部分の注意喚起の技法
 
3.メニュー画面

 コンピュータのコースウェアでは、生徒が勉強する部分を選べる分岐点として、メニュー画面を持つのが一般的である.メニュー画面はまた、各部分の学習終了後に戻ってくる地点でもある.そして、メニュー画面で、[E〕のキー(Exit)か[Q]のキー(Quit)を選択することで、コースウェアを中断することもできるようになっている.ドリル演習型の短いソフトや直線型の構造を持つコースウェアには、メニュー画面がないかもしれない。しかし、メニュー構造を持つことで、コースウェア利用者のその場の必要性に応じてコースウェアの一部分だけを使うことができるなど、コースウェアの有用性を増加させる働きもある.例えば、チュートリアル型のコースウェアも、メニュー構造で演習の部分だけ使うことができれば、ドリル演習型のコースウェアとして用いることも可能である.

 メニュー画面は、学習の過程で生徒により多くのコントロールを与えるので(C−3:コントロールの個人化)、動機づけの上で重要である.非常に短いドリルを除いては、どんなタイプのコースウェアにも必ずメニュー構造を持つことを薦める.まず、メニュー楕造によって、コースウェアが短い区切りまたは部分に分けられる.このことは、生徒がコースウェアを完了する地点に対して、自分が今どこに位置しているかを感じやすくし(C−1:学習要求)、一つの部分からもう一つへと移り行くことで授業に対する注意を維持でき(A−3:変化性)、あるいはメニュー上に終了した部分を示す「星印(*)」を見て報われたと感じることもできる(S−2:肯定的な結果).だから、たとえ学習課題が階層的な構成を持ち、生徒が任意に下位部分を順序立てるのが好ましくない場合でも、メニュー構造を用いることは、何らかの効果を持ちうる.このような場合、メニューを部分を自由に選ばせる為に使うのではなく、あらかじめ決められた順序で下位部分を幾つ終了したかを示し、そしてソフトを中断したり再開する便利な地点として用いれば良い.

 「リーダーシップ」の事例には、二つのメニュー構造が組み込まれている(図16.6).最初のメニュー(図16.9)には、五つのリーダーシップ型のうちのいづれか一つを選ぶか、応用の事例研究に進むか、あるいはコースウェアを中断するかの選択肢がある.五つのリーダーシップ型を教える部分の終わりでは、メニュー画面に分岐して戻ってくる.図16.10に表されたような直線型の構造に比較すると、事例のソフトは柔軟で複数の地点からの中断・再開を可能にしている.もしこのソフトが直線型の柔軟さを欠く構造であったら、学習者を情報提示と練習の長い一つの流れに閉じ込め、少なくとも精神衛生上の意味で、動機づけにマイナスの効果があると思われる.

最初のメニュー(図16.9)
図16.9. 事例の最初のメニュー

 動機づけ方略の点では、柔軟なメニューによって、生徒が自分の学習環境を構造化する機会が与えられる(C−3:コントロールの個人化).生徒には、どの部分を最初にやるかを選ぶことや、幾つかの部分を飛ばして事後テストを受けることさえも許されている.また別の時には、もしある部分をもう一度やってみたいと思えば、そうすることも選べる.このように生徒が学習環境をコントロールすることによって、学習の順序に責任を持たせることで達成動機に貢献したり(R−3:動機との一致)、成功の原因を自分自身に帰する態度を育てること(C−3:コントロールの個人化)にも役立つであろう.

 最後に、メニュー構造を使って、完全なコントロールを持ちたくないと思う生徒に対して、より頻繁で詳細な学習への助言を与えることもできよう。メニュー画面上の提案という形で、どの部分を最初に学習するべきかをアドバイスする.この方法は、達成動機の低い生徒や、不安感の強い生徒の手助けになるかも知れない(R−3:動機との一致).
 

開始 (導入部からメニューなしで)
専制型1
専制型2
相談型1
相談型2
集団型
終了(応用事例研究へ)
図18.10. 事例の最初のメニューに取って変わる直線的構造
 

4.情報程示と学習ガイダンス

 チュートリアル部分では、普通、生徒に情報を提示することで始まる.学習課題が単に知識だけでなく知的技能に関わる時は、まず概念、法則、あるいは手順等の一般的な記述があり、そして規則の応用例が幾つか示されるであろう.情報提示の後では、事実情報を覚えるために類推や記憶のための工夫が与えられたり、概念を識別する能力を高めるためにその概念に当てはまらない例との差を比べたりするかも知れない.

 コースウェアの情報提示部分に相互作用を盛り込むことは、強力な動機づけ要素である.生徒を学習の過程に巻き込む為には、質問をしてそれに答えさせることで好奇心をそそることができる(A−2:探求心の喚起).法則と例を一つ提示したらすぐにも、もう一つの例の一部を生徒に完成させることが可能になる.例えば、4段階の手順を実行するという課題では、まずどれが正しい手順であるかを選ばせる質問をした後で4段階に分解し、それぞれに質問=回答=フイードバックの相互作用を交えて導入する.発見学習的なアフローチを取る時は、法則や例が示される前にさえも回答を求めることができる.

 図16.11と図16.12には、コンピュータと生徒とによる情報のコントロールと相互作円を示す二つの連続した画面が事例から引かれている.最初の画面には、段々とベールを取って見せていく手法が採られ、冒頭の文の後に第二の文が提示される.この段階的露出法で、提示のペースに変化が与えられ(A−3:変化性)、次に何が起こるかについて効果的な緊張感が作り出されるかもしれない(A−2:探求心の喚起).情報が提示されると、今度は生徒が主導権を取り、何かのキーをたたいて次に進める.二番日の画面では、学習者に質問に能動的に答え、入力することが要求される.このような相互作用の過程によって、飽きられたり不注意になってしまう危険のある「キーを一つ押して次に進みなさい.」の連続を避けることができる.

 ここで大切なのは、生徒とコンピュータの相互作用をできるだけ多く、しかもできるだけ早い時期から取り入れることである.この方略によってコースウェアの「注意」の特性が高まるだけでなく、易しいものから難しいものへの順列が生徒の「自信」に影響するであろうし(C−1:学習要求)、細やかな学習ガイダンスが与えられ、生徒の行動が望まれる方向に向けられるかも知れない(S−2:肯定的な結果).更に、練習問題の前にある相互作用によって、心理的に危険のない環境(つまり、恥ずかしくない、失敗と見なされない)の中で練習したいという欲求を満たし、「自信」を高めることに寄与するであろう(C−3:コントロールの個人化).

 
段階的露出法(図16.11)
図16.11.情報提示部分での段階的露出法
 
 
 
(もれ)
図16.12.情報提示部分での生徒とコンピュータの相互作用.
 

5.練習とフィードバック

 チュートリアル型のコースウェアには、コンピュータの反応判断と条件による分岐の能力を活かすために、情報提示部分の後に練習とフィードバックの部分が通常設けられている.ドリル演習型のコースウェアでは、練習とフィードバックの部分がソフトの主要部となる.練習とフィードバックの部分は、まず導入の画面で始まり、練習問題がどうなっているかの説明がある(例えば、問題が何問あって、どのように答えて、どうすれば点数が取れて、合格規準は何で、どうやったら問題をやりおえたり中断したりできるか等).導入の画面の次には、一連の練習問題が続き、それらは、乱数を用いて、あるいは難易度を生徒の進度に応じて調整しながら問題貯蔵庫の中から選ばれることもある.各問題の答えに応じてフィードバックが示され、正解には得点が与えられる.そして、終了画面では、生徒がどの位できたかが知らされて、学習の部分を終え、評価あるいは事後テストヘと進んで行く.

 練習とフィードバック部分の在り方は、コースウェア全体の動機づけ特性に大きな影響がある.まず、練習とフィードバック部分は、今学習していることに対して生徒が自信をつける機会としてとらえられる(C−2:成功の機会).従って、生徒の反応に対するフィードバックを注意深く構成する必要がある.生徒の誤答に対しては誤りを治すための示唆を含んだフィードバックを与えるべきであり、一方で、正答には動機づけのためのフィードバック(つまり賞賛)を与えても良い(S−2:肯定的な結果).誤答に対して、脅かしたり、否定的なコメントをつけたり、批判的で生徒を困惑させるようなフィードバックを与えることは、避けなければならない(例えば、「どこからそんな数が出てきたの?」).

 事例の中では、大きいサイズの文字、感嘆符、カラー等の強調する為の技法を正答に対しての動機づけのフィードバックとして用いている(S−2:肯定的な結果)が、誤答に対してのフィードバックには用いていない.生徒が間違って答えた場合は、矯正的なフィードバックが示された後で、同じ問題をもう一度やるチャンスが与えられる。学習の過程の中では、もし矯正的なフィードバックが与えられることを知っていれば、ある選択肢が何故誤りなのかを調べる為にわざと誤答を選ぶこともあり得る.一方で、何か面白いことが起きないかどうかを確かめる為にわざと誤答を選ぶ生徒もいるだろう.だから、生徒の注意をあらぬ方向へ刺激しない為にも、誤答に対するフィードバックは示唆に富むように、しかし、あまり目立たないようにすべきである.

 第二に、練習の方法を自分でコントロールさせることで、コースウェアの動機づけ特性に効果的に影響することが考えられる.達成すべきゴールばかりでなく自分の今日のゴールを決定できるような構造とり得る(C−3:コントロールの個人化).例えば、項目の貯蔵庫から今日は幾つの言葉を単語の練習に取り出したいかを聞いたり、理想は90%正解である掛け算の問題で、今日は一問何秒で何パーセントの正解率を狙うかを決めさせる.この方法は、生徒自身がゴールを決める作業に関わっているために、コースウェアの国連性が強まった感じがするであろう(R−2:目的指向性).

 「リーダーシップ」のコースウェアの二番目のメニューでは、生徒がリーダーシップ概念を応用する四つの短い事例研究が選択できるようになっている(図18.13).このコースウェアの潜在利用者集団は、相当異なる学問的背景を持っている人がいると予想されている.だから、広範囲に渡る応用問題を用意することで、その中の一つがそれぞれの生徒により適当で、コースウェアの関連性を高めると考えられている.加えて、このメニューにはそれぞれの事例研究に対して、難易度が示されている.自分の思う実力や自信に応じて、易しい事例か難しい事例かの選択ができ、生徒が自分の挑戦レベルを決定できるように工夫されている(C−3:コントロールの個人化).

 練習とフィードバック部分を終了するに当たっては、生徒の学習成果が十分に言及されなければならない.一連の練習問題を終わった時には、どのゴールが達成されたかを知らせるべきである.ゴールが達成されたのなら、終わりの画面に激励の一言があるべきで、学力と努力が成功を導いた(C−3:コントロールの個人化)とコメントしたい(例えば、「おめでとう!注意深く勉強しましたね.練習問題に合格しました.[RETURN]キーを押してメニューに戻り、この調子で頑張ろう」).これは成功の原因は自分自身にあるとの態度を作り上げる助けになる.

図16・13・応用事例研究のための二番目のメニュー

 一方で、もしゴールに到達しなかった場合は、生徒の努力を元気づけて、ゴール達成の助けになるような活動を次に指示する.取り組んでいる課題が重要であることをより広い視野で説明したり(R−2:目的指向性)、前回に比べてどの位進歩しているかを指摘したり、あるいは次の挑戦の前に一休みしてはどうかと提案する等も、いいアイディアかも知れない。
 

6.評価と終了画面

 コースウェアに教授の機能のみならず、独立した部分として評価の機能を含む場合がある.評価部分、つまり事後テストの典型的な構造は、フィードバックがないこと以外は演習とフィードバック部分と同じである。フィードバックを与える前に点数をつけることができるコンピュータの能力を使って、評価の機能が練習とフィードバックの部分に組み込まれているコースウェアもある.

 評価の際の動機づけ設計上の主な関心事は、学習課題への一貫した規準を維持することである(S−3:公平さ).事後テストである規準が要求される時には、前の練習問題にも同じ要求が取り入れてあったべきである.例えば、事後テストで分数のすべてが約分されていなければ正解と見なされない時は、練習問題でも約分されてない分数は誤答として扱われ、最後まで約分していない答えに対しては、特別の矯正的なフィードバックが用意されていなければならない.合格点や時間制限などの評価規準は事後テストを始める前にあらかじめ提示されるべきである.
 評価部分を終わるに当たっては、普通コースウェア全体の終わりでもあるの で、生徒の努力とコースウェアでの成功の関連を強調して(C−3:コントロールの個人化)、より関連性の高い大きな課題の中に現在の成功を位置付けて(R−2:目的指向性)、課題自体が面白いものでなかった場合には何か報酬を与えること(S−2:肯定的な結果)などが薦められる.もし、上級コースに進むよう指示したり、任意の学習ゲームが終りに用意されていたりすれば、新しく学んだ知識や技能がそのような仕上げの学習の中で直ぐに用いられるであろう.このことによって、コースウェア自体に対して、あるいは学習した事柄についての生徒の満足度を高め、コースウェアの動機づけ特性を高めるであろう.
 
 

要約

 

 ARCSモデルを紹介し、授業設計で用いる際の幾つかの問題点について考えた後、次の節では、コンピュータのコースウェアに使える動機づけ上の方略について様々な提案を述ぺた.その次には、「リーダーシップ」のチュートリアル型のコースウェアに基づく事例を検討した.事例では、チュートリアルの 主要部分のそれぞれに動機づけ方略を選択的に用いるための方法を例示した.

 この要約の残りの部分には、この章で説明のあった方略のすべてを表の形で掲載されている(表16.1から表16.4).この表は、意欲を高めるコースウェアを作るために必要なルールを網羅したものと解釈されるべきでなく、単に、有り得る方略の一部に過ぎないと考えられるべきである.これらの方略は、一括して用いたり、勝手気ままに用いられてはならないことを念頭に置くこと.学習者集団を分析して、動機づけ目標を設定することで、どの方略をどの程度取り入れるべきかを決定するわけである.この方略のリストを使ってアイディアを練り、システム的な授業設計アフローチと合わせて用いれば、効果的で効率の良いことに加えて、魅力あるコースウェアが作れるはずである.
 

表16.1. 注意喚起の方略見本
(A−1: 知覚的喚起)
視聴覚的効果: アニメーション、文字の反転、音響、あるいは他のコンピュータの視覚的・聴覚的機能を使い、注意を喚起する. 
見慣なれない内容や事蒙: 見慣れない、矛盾する、あるいは奇怪な内容を使って、注意を刺激する.しかし、思慮分別のある使い方をすること. 
邪魔の削除: 学習者の集中を妨害するような逆機能的な注意の喚起、例えば語を点滅させることを避ける。長いアニメーションを強制しない.
(A−2: 探求心の喚起)
能動的な反応: 能動的な思考を必要とする質問=回答=フィードバックの相互作用を使って、学習者の興味を引く. 
問題の作成: 学習者に自分で解く問題を自分で作らせて、コンピューターに答えを判断させたり結果を示させたりする. 
ミステリー感覚: 探検的な局面で問題解決の状況を示し、段階的に新しい知識を暴いていく.
(A−3: 変化性)
短い区分: 授業の区分を短く押さえ、解釈を助けるような画面の効果的な利用法を考える. 
教授と反応の相互作用:情報提示画面と相互作用の画面を織り交ぜる. 
フォーマットの変化: 画面のフォーマットに一貫性を持たせ、しかし、時折変化を取り入れる. 
機能的な統合: 視覚的・聴覚的な付加物は、控え目に、そして機能的に使い、授業やレッスンのテーマを支える.
 
表16.2. 関連性碓立の方略見本
(R−1:親しみ易さ)
人間的言語とグラフィックス: 人称代名詞や学習者の名前を用いたり、適所で人間や漫画の登場人物を図示する. 
具体性追及のイラスト: グラフィックスやアニメーションで抽象的なあるいは未知の概念を親しみのある場面にはめ込む. 
既知の例と文脈: 学習者がよく知っている教科領域や状況からの例を用いる.
(R−2: 目的指向性)
重要性と有用性: 目標を授業の重要性や有用性に府連させて明確に叙述する. 
埋め込まれた目的: 目標指向的なゲーム、シミュレーション、あるいはファンタジーを使って、目的意識を与える. 
目的の選択権: 学習方法や学習成果に関係する中間ゴールのタイプを学習者に選択させる.
(R−3: 動機との一致)
目的レベルの選択権: 達成動機を刺激するために、難易度の異なるゴールの中から学習者に選択させる. 
得点記録システム: 達成動機を刺激するために、得点記録システムを設け、実行状況に関するフィードバックを与える. 
非競争的なオプション: 依存動機の高い生徒の意欲を損なわないように、競争的なゲームヘの参加を任意とする. 
複数参加者の機会: 二人もしくは三人が協同して作業できるオプションを与える.
 
表16.3. 自信構築の方略見本
(C−1: 学習要求)
目標と構造: 目標とソフトの全体構造を明確に示す. 
規準とフィードバック: 評価規準を説明して、フィードバックつきの練習の機会を与える. 
前提条件: 課題に成功する助けになる前提の知識、技能、あるいは態度について述べる. 
テストの条件: 学習者にテストやドリルに何問あるか、時間制限があるかどうかを知らせる.
(C−2: 成功の機会)
容易から難へ: 最初の学習の段階では、コースウェアを容易な課題から難しい物へ組織し、頻繁なもしくは連続的な強化スケジュールを与える. 
適切な難易度: 学習要求と前提知識・技能を呼応させ、過度の挑戦や退屈を防ぐ. 
複数の開始地点: 事前テストを実施し、複数の授業開始地点を設ける. 
偶発的で制御不能な事象: 学習開始当初でなく、練習や応用場面に偶発的な事象を挿入しある程度の制御不可能な挑戦を加える. 
変えられる難易度: 時間制限を設けたり、刺激の提示スピードを変えたり、状況の複雑さを変えたりして、難易度を変化させる.
(C−3: コントロールの個人化)
脱出コントロール: 学習者がいつでもメニューに戻れるようにし、もし可能な時は、一ページずつ前に戻れるようにする. 
学習ペースのコントロール: 次の画面に移る時にキーを押させることで、学習ぺースを学習者に制御させる. 
速いアクセス: コースウェア開始直後にメニューにアクセスできるようにし、あるいは導入部分の教材を任意選択とする. 
メニュー構造: コースウェアの色々な部分にアクセスする自由を与えるためにメニュー構造を使う. 
帰因言語: 成功の原因を学習者の努力や学力に帰因させるような語句を使う.
 
表16.4. 満足感創出の方略見本
(S−1: 自然の結果)
応用問題: 新しく学んだ知識や技能の応用が必要な課題を設ける. 
次の課題への転移: 新しく学んだ知識や技能を次にすぐ使えるようにコースウェアを組み立てる. 
シミュレーション的応用: 学んだ技能や知識の応用を要求するゲームやシミュレーションをコースウェアの最後に含む.
(S−2: 肯定的な結果)
適切な強化スケジュール: 成功に対する動機づけフィードバックやその他の報酬をチュートリアル部分ではすべての反応の後に、練習問題では一連の反応の後に用いる. 
有意味な強化: 比較的に簡単な課題に多すぎる称賛を与えることで、フィードバックの有する動機づけの効力を弱めないようにする. 
正答への報酬: 正解に対して外的な報酬を使い、誤答には褒美になるような結果を与えないようにする. 
ひかえめな報酬: 報酬が授業そのものよりも面白くならないように、報酬はひかえめに用いる. 
報酬一式のオプション: 外的な報酬一式を使用者が選択できるオプションにして、外的な制御のもつマイナスの効果を避ける.
(S−3: 公平さ)
目的と内容の一貫性: ソフトの構造や内容を記述してあるソフトの目的や概略と一致させる. 
練習とテストの一貫性: 練習とテストの間に一貫性を任ち、学習目標とも一致させる.