熊本大学大学院教授システム学専攻
目次:
1.講義概要

【第1回】イントロダクション「はじめに」
~はじめに~

教育とは、「ヒトを人間にする営み」だと定義されます。 動物学者ポルトマンが「人間一年早産説」で指摘するように、ヒトは、他の哺乳類と比べて早く生まれすぎているようです。

生まれてすぐ自立歩行する動物たちに比べて親がいなければすぐ死んでしまう「よるべなき」存在として生まれるヒトは、「育て方」次第で大きく差が出る可塑性を持っていることが手に取るように分かります。 ヒトは教育なしでは人間になれないのです。狼に育てられた少女カマラとアマラの逸話は(オグバーンの実態調査[1]によってその信憑性は疑問視されていますが)、「育て方」がいかに決定的なインパクトを持つかを教えてくれます。

「おたまじゃくしはかえるの子」というように、おたまじゃくしは放置されても自然の摂理に従って立派なかえるになる。でも、ヒトの子は、放置されたら自然の摂理に従って立派な人間になるわけではない。ヒトの子が人間になるためには教育が必要だ。ヒトの子は教育によって人間になる。早く生まれすぎるからこそ、ヒトの子には大きな可能性がある。人間は、大人になれば自分で自分を教育できるようになるから、人間だけが自分の生きる道を選択できる存在である、と。人間の生き方と教育の在り方について、授業実践をしながら訴えた説く教育哲学者林竹二[2]の「授業・人間について」(国土社 1973年)は、教育に携わる我々に誇りと緊張感を与えるのに十分なメッセージを秘めています。

この講義では、「教育」について、一緒に考えていきましょう。教職課程では習ったはずの基本的事項をおさらいし、教育の仕事に携わっていることに誇りと自信を持てるようになりましょう。

第1回の課題は、「講義概要(シラバス)」を熟知することです。 単位の取得方法や学習方法などについて疑問があればそれを解消してください。 そのために、担当教員と個別の連絡を取るか、または他の受講者も知ったほうがよいと思うことについては、BBSボードを使って「公開質問」を投稿してください。課題2の提出方法はこれで分かります。 まずは、「講義概要(シラバス)」がどこにあるかを見つけて、「熟読」してください。質問や要望は遠慮なく表明ください。

次に、これを読んだ証拠を残すために(毎回の講義で求められます:課題2)、掲示板に簡単な自己紹介(あるいはこの科目を履修するにあたっての抱負・目標・懸念・期待・要望などもどんどん)書いてください。

注: [1] 左の目次「5.参考リンク集」に、「狼に育てられた少女がいる」という神話(by「いんちき」心理学研究所)へのリンクがあります。
[2] 宮城教育大学の学長だった時代に、全国を行脚して自らが授業をしてみせて、「子どもたちには無限の可能性がある。それを引き出してあげるのが教師の仕事だ」と訴えたことで有名。林竹二の授業実践を追いかけたNHKで放送された番組「授業巡礼:哲学者・林竹二が残したもの」(NHK「ETV8」1988年2月15日放送)は、なかなかの感動もの。上映会でもやりましょうか? 参照:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』林竹二