熊本大学大学院教授システム学専攻
目次:
[第8回]IT分野の研究事例(2)
IT分野の研究事例(2)
今回のタスク(課題)
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第8回: IT分野の研究事例(2)(担当:喜多敏博)

内容を読んで学習した後、「今回のタスク」を行ってください。

[研究テーマについての雑感]

喜多の研究テーマについて,自分で振り返ってみた時に,いくつか特徴というか,思うところがある気がします。これらのことは,これまで研究対象が変わってきた間でも共通していると思います。

大学の研究は,遊び心を忘れてはならない

実にまっとうな,世間の誰もが価値を認める研究テーマに取り組んでも,マンパワーや研究費は企業や某有名大学にはかなわないでしょう。そういうのは,そういう人達にお任せしておいて,straightforward なテーマ設定に「ひねり」を加えたテーマで存在価値を打ち出したいです。「アイデア勝負」とも言えます。

貧乏くさい研究が好き

単に「好き」なだけです。もちろん,多額の研究費を持っているわけでもないので,言い訳じみてるのは確かです。でも発想が貧乏人的なのは性格のせいなので,本人は結構楽しいみたいです。

たとえば,poor man's WebCT = Moodle などということもある。また,今まで高価なソフトでないと出来なかったことが自分の研究で作ったものによって可能になると,嬉しいとか。

お金の集まるところでは,「流行」と「流行離れ」が激しく行われる傾向があり,私はなんとなく気遅れするので,「お金持ち」の研究テーマは嫌いです。

当座の小さな目標に向かって一生懸命やっているうちに思わぬ発見が

(私が以前,主な研究対象としていた)非線形システムの世界的な研究グループで,"aim at a trivial thing" が標語になっていると聞いたことがあります。最初から大それた目標を立てて取り組むよりも,身近な目標に向かった方が実は大きな成果が得られるものだ,という意味に私は理解しています。いわゆる「発見」というものは,予定して得られるものではない訳で,どんな小さなテーマにでも,その種は潜んでいると信じています。

[今,構想している研究テーマ]

以下,どれもまだ単なる構想段階です。

学習者の心的状態の実時間推定と音響によるフィードバック

オンラインで学習活動を行っているとき,無音の環境と,音楽等の音響が鳴っている環境とを比較した場合,どちらが学習や理解が促進されるのか興味がある。ただし,音ならノイズでも何でもよいというわけではないので,学習者の気分や態度をなんらかの方法(1秒当りのクリック数,テストの正答率の測定等)で時々刻々推定し,学習を促進するためにそれに見合った音響を選んで,学習者に与える。flash/mp3のストリーミングをリアルタイム制御可能なサーバからの音響情報をLMSの機能の一部として受信して再生するのも一つの方法。カオス時系列に基づいて環境音楽的な音響を生成する試作アプリケーションがあるので,それをクライアント側で動作させ,音響の種類を選択するパラメータ値をサーバ側から送信するのも面白い。

3次元アニメーションが簡単に生成できるツール

数値データを与えるだけで,アニメーションが作成できるツールの開発。物理的な現象の説明図を生成するツールとして。また,文字や図形が3次元的に動いて分かり易く説明する動画を生成するツールとして。

時間的に離散的なデータしかなくとも,線形補間によって滑らかにアニメーションが行われる機能を持つ。Webインターフェイスで動作し,世界中どこからでも操作できる。WebPlot3Dまたはgnuplotのエンジンを利用する。

quiz(自動採点テスト)のフィードバックに簡単なビデオ, 音声,アニメーションを。

quiz の誤解答に対するフィードバック(正解のヒント解説)は,単なる文字でなく,動画や音声が効果的と思われる。とはいっても,準備する手間は大きいので,なるべく簡単に作成出来る方法を探る。例えば誤解答に対して,パターン認識(テンプレートマッチング,クラスタリング)を行い,適切な説明動画に導くようにするなど。LMSと統合し,手軽に使えるようにする。

教育効果の高い quiz の自動作成ツール,レシピ集サイトの構築

自動採点 quiz は,LMS等のeラーニングシステムで多用されるツールだが,安易に作成した問題だと,学習者は単なる「数打ちゃ当たる」モードに入ってしまう。解答することで自然に学習できる quiz集を,様々な学習課題について構築したい。人工知能,エキスパートシステム的な方法による quiz 作成ツールの試作も考えたい。(生身の専門家が添削,指導するやり方を記録して,自動的に quiz 生成する)

  • 各問題毎にリアルタイムの正答率が表示される。
  • 穴埋め問題で穴を作ると自動的に類似語を類推して選択肢に入れてくれる
  • 選択肢の表現/選択肢が動的に変わるテスト
  • フィードバックのメッセージの自動生成

このような quiz作成のツール,ノウハウを Wikipedia 的に公開し,コミュニティによってreviseできるサイトの構築ができれば面白い。

上のような平凡なアイデアよりももっと突飛な発想のテーマを募集中

です。

[これまでに行った主な研究]

http://133.95.4.20/alt-www/research1.html(リンク切れ)をご覧ください。最近のものから新しい順に並んでいます。

傾向としては,私の研究者としての履歴を反映して

  • eラーニング
  • データ可視化
  • 非線形動的システム
  • 電力系統安定度解析

の順です。