熊本大学大学院教授システム学専攻
目次:
6.教育メディア研究の知見とメディア選択

【第6回】学習指導・評価論(4)教育メディア研究の知見とメディア選択
はじめに~

技術革新で利用が可能になる様々な教育メディアでは何ができるのか、またそれらをどのように活用するのが良いか検討されてきた。適性処遇交互作用(ATI:Aptitude Treatment Interaction)研究の手法を援用した教育メディア比較研究の知見としては、「どのメディアも万能薬にはならないが、どのメディアでも学習は成立する」ことや、「学習課題の特性と学習者の特性に応じて、最適な学習環境が異なる」、「より新しいメディアを使う方が学習効果は高まる(新奇性効果)」、「どのメディアを選ぶかよりも、そのメディアをどう使うかで差が出る(メディア属性、機能的同等性)」、「使うメディアに対する構えによって学習効果に影響がでる(メディア知覚)」、あるいは経済性の観点から「(どのメディアでも学習が成立するのだから)より簡単なメディアを使って、学習者を能動的にするのがよい(シュラムのまとめ)」などが主張されてきた(佐賀、1995)。情報通信技術(ICT)の発達に伴い様々な学習環境が提案・実現されている(鈴木、2005)

いわゆるマルチメディア教材に至る要素技術の進展をまとめた図を下記に示す(鈴木、1997)。今回は、まず教育メディア研究の流れを概観し、代表的な教材としてミミ号の航海を紹介する。第8回で紹介する「ジャスパー冒険物語」にいたる以前の歴史を紐解いてみよう。最後は、メディアをどう選択するか、についてのモデルを紹介する。余裕があれば是非読んでください。


    ◇ 参考文献 ◇
  • 佐賀啓男(1995)「文化とのつながりを求める教育メディア研究」『教育メディア研究』 第1回 第1号、p.44-49



  • 鈴木克明(2005)「〔解説〕教育・学習のモデルとICT利用の展望:教授設計理論の視座から」『教育システム情報学会誌』22巻1号、p.42-53



  • 鈴木克明(1997)「3章 マルチメディアと教育」赤堀侃司編著『高度情報社会の中の学校~最先端の学校づくりを目指す~』(学校変革実践シリーズ第3巻)ぎょうせい、p.73-104