熊本大学大学院教授システム学専攻
目次:
7.行動主義:代理強化とティーチングマシン

◆プログラム学習の5原則 ◆

プログラム学習の研究から、表6-1に掲げる5つの原理が提唱された。行動主義心理学では、整えられた条件の中でどのぐらいの数だけ反応練習をしたかが学習効果を規定していると考えている。正しい反応には必ずそれを「強化」するためのフィードバックが与えられるべきであり、その学習のプロセスを保障するためには個別学習が基本となると考えた。これが下記の5原則の1~4番目に現れている。最後の「学習者検証の原理」は、行動主義心理学が教育学の実証的アプローチ重視に果たした最大の貢献であると筆者が考える視点である。この視点は、現在でもIDプロセスにおける「形成的評価」ないしは、「フィードバックと改善」の考え方に継承されている。

表6-1:プログラム学習の5原理
原 理
内 容
積極的反応の原理 学習者がどの程度理解したかは、問題に答えさせて判断する。 外に出してみることで初めて学習の程度が判明すると考えよ。
即時確認の原理 学習者の反応の正否をすぐ知らせる。 学習者は、自分の反応が正しかったかどうかを知った上で、次の反応を要求されるようにせよ。
スモールステップの原理 学習者がなるべく失敗しないように、学習のステップを細かく設定する。 失敗をするとそれが定着する危険性があると考えよ。
自己ペースの原理 学習者個々が自分のペースで学習を進められるようにする。 適当なスピードは学習者それぞれによって異なると考えよ。
学習者検証の原理 プログラムの良し悪しは、専門家が判断するのではなく、実際に学習が成立したかどうかで判断する。そのためには、未学習の協力者に開発中のプログラムを試用してもらい、必要に応じて改善せよ。

注:東洋他(編)(1979)「新・教育の事典」p.720を参考に鈴木がまとめた
出典:鈴木克明(編著)(2004)『詳説インストラクショナルデザイン:eラーニングファンダメンタル』NPO法人日本イーラーニングコンソーシアム(パッケージ版テキスト)第4章