熊本大学大学院教授システム学専攻
目次:
7.行動主義:代理強化とティーチングマシン

◆代理強化 ◆

バンデューラ(Bandura, A.)はカナダ人の心理学者。自分で自分をコントロールしているという実感を「自己効力感(self-efficacy)」と命名したことなどで知られている。1970年代の行動主義心理学が盛んだった頃、自分で行動して強化を受けて学習することのほかにも、他人の行動の結末を観察することでも学習が成立する、という考え方を実験的に確かめ、「観察学習」という分野を開いた(社会的学習理論、モデリングによる学習と呼ばれている)。代理強化(vicarious reinforcement)とは、自分自身ではなく他人がある行為の結果として報酬を得たことを観察することを通して、自分もそうしよう、という思いを抱く(つまり、代理で強化される)ことを指す概念である。いわゆる「人の振り見て我が振り直せ」というもの。直接経験しなくても、伝聞や読書などによっても影響を受ける(学習が成立する)ことを理論化した。

代理強化の考え方は、キャンペーンなど態度の変容に迫るメッセージを組み立てる手法としてよく用いられている。たとえば、麻薬の危険を知らせる青少年向けのPRメッセージを青少年があこがれるプロバスケットボール選手が語る。「僕もあの時麻薬に手を出さなかったから、今の僕があるんだよ」と。コマーシャルなどで、この商品のおかげでとてもよい効果があったことをユーザを登場させて語らせる、という手法も一般的なものであるが、ここにも代理強化の考え方が応用されている。知らず知らずのうちに、我々は様々な形で「代理強化」を受けて自分なりの考え方を持つようになっているのである。