熊本大学大学院教授システム学専攻
目次:
10.折衷主義:学習科学とデザイン実験アプローチ

◆デザイン実験アプローチ ◆

デザイン実験アプローチの特徴と研究サイクル

三輪・斎藤(2004)と同じ特集号で「デザイン実験アプローチ」を説明した解説論文で、大島(2004)は、「デザイン実験アプローチ」の特徴として次の5点を挙げて説明している。

つまり、実験室に囲い込んでできるだけ単純化して一つずつ解き明かそうというよりは、混沌とした「現場」を混沌としたまま丸ごと受け止め、複眼的に何が起きるかを観察し、厳密さは多少犠牲にしながらも次の実践に直接役立つような知見(プロファイル)を得ることを目指す(ということかな)。これまでの伝統的な学習心理学者が聞いたら「そんないい加減な(のは研究じゃない)」と言われかねない大胆さである。

図2に、三宅・白水(2003)によるデザイン実験アプローチの研究サイクルを示す。「こうすると、ここまで学べるだろう」という学習モデルに基づいて授業をデザインし、実践してみてその結果を観察する。因果関係についての決定的な証拠は得られないが、似たような現象が何度も起きれば、最初の「学習モデル」は真実を示している可能性が高い。最初のモデルを改善し、より強力な授業デザインをそこから引き出していく。やがてそこから誰もが使える一般性の高いデザイン原則を導き出していくのがもっとも「普通のやり方」だと説明している。


そう、そうこなくっちゃねぇ。これぞインストラクショナルデザインそのものですよ!





図2:学習科学の研究方法(三宅・白水、2003、p.71より引用)