第3期行動計画(令和 2 年度~令和 7 年度)

 

・本センターの特徴とこれまでの実績
・5年後に目指すビジョン
・行動計画(令和 2 年度~令和 7 年度)

本センターの特徴とこれまでの実績

2017年 4 月に学内共同教育研究施設として発足した 教授システム学研究センターは、 熊本大学が大学戦略として掲げている「地域課題を的確に把握し、教育研究の成果から最適解を提供する地域連携システムの構築」を、地域の人材育成、社会人の学び直しの充実を通じて実現することを目指して実績を重ねてきた。 我が国に唯一無二の教授システム学に特化した研究機関として 、 科研費「教育工学」( A 9 細目番号 09070 )と「学習支援システム」 J 62 細目番号 62030の両方での実績を重ね 、 第 3 期 が開始された平成 28 年度から今年度まで の 4 年間 に 、センター 設立前からの通算で、科研費( 研究 代表者 28 件 と 分担研究者 50 件 )で 総額 77,642千円の研究費を獲得した。 この間に発表した研究成果 としては、査読付学会誌 論文 35 本(英語 12 本を含む 、書籍 16 冊(英語 5 冊 を含む 等 があり、そ の他 、 国際会議や国内学会でも多数発信してきた。
また、文部科学省「教授システム学の研究普及拠点の形成-学び直しを支援する社会人教育専門家養成パッケージの開発と普及-」(平成 26 年度~平成 31 年度)や文部科学省教育関係共同利用拠点<教授システム学に基づく大学教員の教育実践力開発拠点>(平成 30 年度~令和 2 年度)、文部科学省「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」運営拠点及び中核拠点(東北大学との共同申請)(平成 31 年度~令和 5 年)などの文科省関連の研究費ならびに企業などとの共同研究 ・委託研究をあわせて 16 件、今年度までに総額 130,047 千 円の外部資金も獲得し、その成果を Web サイトなどで公開してき た。
そのうち、文部科学省教育関係共同利用拠点 「 大学の職員の組織的な研修等の実施機関 」は、全国に14拠点ある(九州では九州大学と本学のみ)。 本センターは、 <教授システム学に基づく大学教員の教育実践力開発拠点> として認定を受け 、これまでのセンターでの研究成果を 学内外に発信 している。 以下に掲げる 5 つの柱で 、教授する力のうちの授業実践力(デリバリ)に対するノウハウを身に付けることに留まらず、デリバリの基盤となる授業設計力(デザイン)あるいはカリキュラム設計力を身に付ける機会を提供することにより、 高等教育の質保証・ 向上を支える 活動を展開している。 現在の 認定期間 は令和 2 年度までであり、更新申請をすることで、 最長 5 年間、 以下の機能を維持していくことを目指す必要がある 。

① インストラクショナル デザイン 公開講座 (入門編・応用編 の 実施
② 「 IDポータル」による情報提供並びに支援ツール・実力診断
③ 「教授システム学専攻公開科目」による学修機会の提供
④ FD 研修講師・大学教育設計コンサルタント派遣
⑤ 大学教員志望者のための教え方講座:科目デザイン編 などの提供

5年後に目指すビジョン

大学生と社会人が自ら学べる環境の構築と提供

本センターはミッションとして「社会人が自ら学べる環境の構築と提供」を掲げてきた。子どもではなく大人を扱うことを特徴とする意図として、その代表として「社会人」という言葉を使ってきた。しかし、大学教育に特化した文科省事業への参加の機会を得たこと等により、学内での貢献についても具体化したため、大学生を含まない社会人だけという印象を与えるのは不自然になってきた。このことを受けてミッションを「大学生と社会人が自ら学べる環境の構築と提供」と改め、6 年後のセンターの姿(ビジョン)とそこに至る道筋で重視する考え方(バリュー)を以下のように明確化する。

【ミッション】

    大学生と社会人が自ら学べる環境の構築と提供

【ビジョン】

  1. 本学の中期計画に資する研究センターとしての活動が高く評価されている。
  2. 学内共同利用施設として、本センター事業部門の「FD 活動支援室」と「eラーニング推進室」が本学の教育の質向上に役立つ存在になっている。
  3. 各研究部門が事業部門を支える研究成果を国際的レベルで創造・発信している。
  4. 本センターの研究成果が大学院教授システム学専攻の教育に役立てらてられている。
  5. 文科省教育関係共同利用拠点としての22回目の更新申請が受理されて活動しており、次の更新申請に向けての準備が整っている。
  6. 文科省科省事業の成功によって全国規模の持続的な産学共同人材育成システム拠点の中核的存在として認知されている。
  7. 世代交代が無事に終わり、50代の新進気鋭な教授陣が新しい発想でセンターを切り盛りしている。

【バリュー】

  1. 学習者中心:本センターの母体である大学院教授システム学専攻の学生のみならず、本センターが提供する学習機会の受益者に効果的で効率的で魅力的な学習機会を提供することを常に第一に考える。
  2. 若手優先:本センターに所属する教職員が成長し、次世代を担う準備ができるよう、若手優先で研究する機会を与え、雑務は年長者が担う。
  3. エバンジェリスト:研究のためだけの研究や実績を作るためだけの研究を避け、教育実践の質向上に資する研究に従事し、教授システム学の普及と啓蒙に努める。

各部門の行動計画(令和 2 年度~令和 7 年度)

 インストラクショナルデザイン研究部門

インストラクショナルデザイン研究部門は、教育工学分野における教育改善・支援の研究者の育成、インストラクショナルデザインをユーザーとして活用し、自他の業務を改善できる人材の育成、高度職業人ならびに地域の人材育成へのインストラクショナルデザインの適用ならびにその支援、人材育成における対象者の特性に即した教授法の確立とその教授法の普及、認知科学・学習科学の知見を取り入れた ICT による教育支援の実践、自立した学習者の育成のための教育プログラム設計と実践を行う。新事業部門「FD 活動支援室」並びに文部科学省教育関係共同利用拠点<教授システム学に基づく大学教員の教育実践力開発拠点>を介して提供するプレ FD・FD 教材等を企画・設計・開発し、部門の研究成果を学内外に広く提供していく。

 

学修支援情報システム研究部門

学習支援情報システム研究部門は、本学及び高等教育機関一般、地域での人材育成に役立つオンラインツールやアプリケーションの開発を行い、それを用いた ICT 利用教育を実践する。インストラクショナルデザイナーと並ぶ専門職として AI 技術やデータサイエンスの教育利用を促進する「ラーニングテクノロジスト」がその重要性を増している。この専門職に求められていることが何かをコンピテンシーとして洗い出し、養成プログラムを設計・開発し、教授システム学専攻の教育カリキュラムの改訂を伴う試行を経て、研究成果を蓄積・公開することを目指す。

 

地域連携システム研究部門

地域連携システム研究部門は、開発した教育・研修プログラムを県内外で実施し、優れた人材の育成、インストラクショナルデザインの普及に取り組む。包括連携協定を結んだ熊本経済同友会との連携をさらに進め、文部科学省「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」で求められる企業人材の大学教育への登用という循環に必要な産学連携の在り方を模索し、地域と連携して施策を企画・立案・試行し、地域に還元するとともに全国にその研究成果を展開することを目指す。

3部門は相互に連携する。地域連携システム研究部門は地域の人材育成の問題点を分析 し、インストラクショナルデザイン研究部門はその問題の解決のための効果的な教育設計を行い、学習支援情報システム研究部門はその設計を効率的に実施するための ICT ツールの設計や開発を行う。その成果を地域の人材育成の現場に反映するというようなサイクル型の連携が想定される。さらに各組織の人材育成担当者間を相互に結びつけるために、ICT を活用した「地域連携システム」を構築する。各組織における人材育成担当者はそれぞれの組織において類似の問題を抱える一方、連携するチャンスにはあまり恵まれていない。それぞれの取組を相互に参照したり、助言したりしあうことで情報を交換し、地域内・国内の連携を強化する仕組みを準備することは重要な意義を持つ。

 

eラーニング推進室

e ラーニング推進室は、学習支援情報システム研究部門の研究成果を教育実践に応用する事業を進める。本学の教育における ICT 活用を実質的に進め、教育の質向上につながることを目指して、e ラーニング化の企画・推進、コンテンツの開発支援、e ラーニング授業の設計支援、アプリケーション開発の企画実践、システムの管理運営その他 ICT 利用教育・メディア教育の実践支援等に関する事業を進める。

 

FD 活動支援室

FD 活動支援室は、本学の FD 憲章に基づき、大学教育統括管理運営機構が統括する FD 活動の推進、人材養成のニーズに対応した教育プログラムの開発・展開に係る支援等に関する事業を進める。とりわけ、(1)大学院生への(努力義務化)プレ FD として「教育改善スキル修得オンラインプログラム」を全学に提供する(対面学習部分も学内者は無料で受講できる)ことに対する支援、(2)新任・転任教員等教育研修会への講師派遣を継続し、また求めに応じて各部局での研修会・検討会への講師派遣を行うこと、並びに(3)学生の学修支援につながるMoodle 上での効果的な教材作成方法の実例を取り上げた講演会を、「e ラーニング推進室」と連携して初級編から上級編まで各種実施するとともに、オンラインでも同内容をいつでも受講できるようにするための事業を進める。

第3期(令和2年度~令和7年度)行動計画