ご挨拶(平成20年3月)
教授システム学専攻は、平成18年度に熊本大学大学院社会文化科学研究科の独立専攻(修士課程)として設置され、15名の第一期生と22名の科目等履修生を迎えてスタートしました。平成20年3月に最初の修了生7名を輩出し、平成20年度には博士後期課程(定員3名)を新設するとともに、修士課程を博士前期課程に名称変更し入学定員を15名に拡充しました。平成22年度末には最初の博士の学位を授与し、本専攻も一人前になりました。 本専攻では、開設以来、教授システム学に関する体系的な教育研究を行い、教育効果・効率・魅力の高いeラーニングを開発・実施・評価できる高度専門職業人等を養成することを目的とし、教育研究活動を展開してきました。
博士後期課程では、この分野に対する社会的ニーズや学問的要請に応える大学院教育の深化及び学術研究の高度化を推進し、同分野の発展・普及を主導できる教育研究者等を養成しています。とくに、博士前期課程では、修了生に求める職務遂行能力(コンピテンシー)を明らかにし、実践的なカリキュラムを整備しました。eラーニング業界の求める人材を輩出するため、特定非営利活動法人日本イーラーニングコンソシアムと連携し、同コンソシアムの「eラーニングプロフェッショナル資格認定制度(eLP)」の相互認定機関としての認証を受けました。修了生の多くは複数のeLP資格を取得して、eラーニングの専門家として本学を巣立っていっています。
また、本専攻での取り組みと将来構想が文部科学省に認められ、「平成19年度大学院教育改革支援プログラム」に採択されました(全国の国公私立大学355件の応募から126件が採択)。創設して間もない本専攻ではありましたが、早くも取組の実績と将来性が全国レベルで認められたと喜びました。採択を受けて、本専攻は、平成19年度から21年度にかけて、「IT時代の教育イノベーター育成プログラム(グローバル人材育成を主導できるeラーニング専門家の養成)」に取り組みました。平成20年度に迎えた第3期生からは、実践力の強化を目指した「ストーリー型カリキュラム」を試験的に導入し、平成21年度からは「統合型カリキュラム設計演習」として単位化しました。その他にもeポートフォリオ活用教育改善システムの開発や国際遠隔共同授業の開発と「Global Education Strategies」としての単位化、あるいは企業内教育連携による「学びと仕事の融合学習」の開発と「職場課題実践研究」としての単位化などの改革に結実しました。 平成19-22年度には国際協力機構(JICA)の協力のもとで途上国からの留学生を迎えて、新科目「国際協力におけるeラーニング」を開設し、必修全科目コンテンツの英語化も進みました。
今後は、これらの実績を生かして教育研究の取り組みを進めていきます。学位取得を目指す正規生には、前期課程2年分の学費で3年間在学できる長期履修制度や、その逆に2年より短期で修了する在学期間の特例制度を設けて、柔軟な履修をサポートします。また正規生の他にも、特定教員の指導のもとで研究を進める研究生や科目ごとの単位を取得できる科目等履修生の制度も前期・後期課程ともに用意してあります。eラーニング関連企業との共同研究や学会・研究会での研究成果報告など、活動の幅を徐々に充実していきます。日本のeラーニングには学問的な基盤と専門家として活躍する人材が必要だ、という私たちと想いを共有してくださる皆様とともに学ぶ日を心から楽しみにしております。
平成20年3月
鈴木克明