第12期生 加藤幸路さん

加藤 幸路さん 第12期生
サンライトヒューマンTDMC株式会社

現在のお仕事について簡単にご紹介いただけますか。

大学院在籍時は、国内のMOOC(大規模公開オンライン講座)普及推進を目的とした日本オープンオンライン教育推進協議会(以下JMOOC)の事務局で働いていました。
2019年3月の修了後、インストラクショナルデザイナーとしてもっと経験を積みたいと思っていたところ、ご縁あり10月より3期生の森田晃子さんの会社(サンライトヒューマンTDMC株式会社)に転職することになりました。まだ入社して間もないですが、企業教育のコンサルタントとして新たなキャリアをスタートしました。

本専攻に入学しようと思ったきっかけを教えてください

前職のJMOOCで、企業のMOOC利用推進を目的に、大学1・2年次で学ぶ理工系の基礎科目をMOOCにして提供する取組みが進んでいました。前任者から引き継ぐと、シラバスの学習目標に「○○について講義する」と書かれている等、多様な受講者が自分が学びたい講座なのかどうか判断するための情報が不十分であることに気付きました。私自身は学問領域の専門家でもなく、講師経験もないため、「これって変じゃない?」と思ってもそれがなぜおかしいのか?どうやったら改善できるのか?が分からない状態でした。

そんな時にあるメルマガで、熊大の公開講座があることを知りました。「インストラクショナル・デザイン」がどういう学問か知りませんでしたが、対象者として「学校教職員・医療従事者・企業の研修、教育担当者、その他、学びや教育を改善したい人」とあり、「学びや教育を改善したい人」という言葉に惹かれて申し込みました。参加して現状の講座の問題点の原因や理由、そして改善策の道筋が見えた気がして、本格的に学びたいと思いました。

実際に入学されて、いかがでしたか。

入学したのが子供が2歳になる年で、産後、仕事復帰してから1年たったタイミングでした。不安がなかったわけではありませんが、新卒で入社した会社で、社会人大学院の学生募集広告の営業・企画をしており、取材を通して数百名の社会人大学院生に働きながら学ぶとはどういうことかを伺ってきたので、大変さは覚悟しつつ、頑張ればきっと何とかなるはず、絶対に面白いはず!と思っていました。

大学院によって課題の量や大変さの種類は違うと思いますが、GSISは「教え方を教える」大学院なだけあって、上手に限界すれすれのラインまで引き上げられる課題や仕掛けがたくさんあり、「もうだめかも」と思ったことも何度もありましたが、同期の仲間に支えられたり、先生方に助けていただいたりで、何とか2年で修了することができました。

学んだことは、どのように役立っていますか?

大学院では自分自身が【学ぶ側】となるだけでなく、【学びを提供する側】としての実践的な課題が用意されていたため、両側面での経験を行ったり来たりしながら、インストラクショナルデザインの専門職としての知識やスキルを修得することができました。

特に「eラーニング実践演習」という科目では、インストラクショナルデザイナーのインターンとして熊大の学部の科目をeラーニング化するのですが、JMOOCでの業務内容と重なる部分が多く、学問領域の専門家ではない自分が、インストラクショナルデザイナーとしてどこまで踏み込むか、どのようなかかわり方をすれば講師の支援になるかなど、課題を通して多くの気付きがありました。業務と課題を並行して走らせたことでインストラクショナルデザイナーの役割や介在価値について、より多面的に実践を通して学ぶことができたと思います。

また業務では社内に相談できる人がいなかったため、一人で悩むしかなかったのですが、大学院のインターンは3~4名のチームで担当をしていたため、大学や病院、企業等様々な組織に所属し、経験が異なる人と意見交換できたため、自分が気付けていなかったことに気付かせてもらうことも多々ありました。また学び方も生活スタイルも異なる仲間と、時間やコミュニケーション手段の制約がある中で、何が求められているかについて視界合わせをし、その上で役割分担をし最終的な納品まで進捗管理していく経験を積むことができました。

この経験は、業務においても、遠隔地にいる教員のMOOC開発支援や、制作業務をアウトソースしている制作会社、動画の字幕作成を依頼しているフリーランサー、プラットフォーム提供会社と、限られた時間・予算の中でプロジェクトを推進する上で、大変役に立ちました。

普段は、どのように学習を進めていましたか?

平日は子供が21時半くらいに寝るので、子供が寝てから深夜0時(遅い時は1時、2時という日も)までを学習の時間に、土日は日中に夫に子供を連れて遊びに出かけてもらい、近くのカフェに入り浸って勉強をしていました。

最初の数カ月は、子供が寝たらすぐにPCを立ち上げてという感じだったのですが、途中から子供が寝て一息つくうちにPCを立ち上げるのが億劫になったタイミングもありました。そういう時は、相互コメントや、他の方の課題提出の通知がメールに届いていないかだけ、とりあえず携帯でチェックするところから始めていました。いざメールをチェックしてみると、他の方がすごいレポートをアップしていてそこから刺激を受けたり、自分が提出したものに対して、考えさせられるような指摘をいただき、早速返信したくなって、その流れでPCを立ち上げ、課題に取り組んだりしていました。

学生間のコミュニケーションはどのようにとられていますか?

同期や先輩とは入科式の時にFacebookのMessengerでグループを作り、お互いに分からないことを聞きあったり励まし合ったりしていました。

先生とのコミュニケーションはどのようにとられていますか?

鈴木先生がほぼ毎月オフィスアワーを開催してくださったので、できるだけ毎回活用するようにしていました。鈴木先生からの案内メールに「なんでも相談しにきてください」とあったので、それを文字通り素直に受け取り、相談するポイントすら言語化できていない状態で「駆け込み寺」のように活用させていただいた時もありました。

M1前期は、提出した課題へのフィードバックをどう解釈していいか分からず、自分なりの解釈が正しい方向に進んでいるか確かめたり、更に理解を深めるための場に使わせていただきました。研究が具体化したM1後期からは、研究の進め方や内容について相談をさせていただきました。毎回、視点をぐっと深めたり広げていただいたり、次のなる課題を示していただいたり、1対1でとても贅沢な時間をいただきました。

研究の主指導教員の先生とも、Messengerでやり取りをしたり、相談内容によってはSkypeで対話をしながら相談をさせていただきました。先生ご自身も私も子供が小さかったので、お互いに業務と家庭のスケジュールの合間を縫って日程調整をしつつ、効率的に進めることができました。

専攻を修了して得た収穫はなんですか?

「ポートフォリオ演習」という学んだことを振り返り、それを他者にプレゼンする「ショーケース」を作成し、学生同士、相互コメントする科目を在学期間中通年で学ぶのですが、この科目を通じて自分が何を学んだのか?それを学べたのはなぜか?を定期的に考えさせられるため、学び上手になるためのコツを習得できたと思います。同じ科目を履修していたのに、自分が気付かなかった視点を学び取っている同期のショーケースを見て、自分の理解を深めることもありました。

また他の方と自分のショーケースを比較する中で、ぼんやりとしていた自分のキャリアの軸が「大人の学びを豊かにすること」だ!と明確にすることができました。この軸でキャリアをもっと発展させるために何をすべきか、どういう道に進んでどういう経験をこれから積んでいったら楽しいか、今後の指針を自分の中に作ることができました。

最後に、これから入学を考えている人にメッセージをお願いします。

インストラクショナルデザインは「大人の学び」をどうやったら効果的、効率的、魅力的になるかを追求する学問です。この学問の専門家である先生方が実践と研究を重ねて作り上げられたカリキュラムはとてもよくできています。単に「知る」ではなく、どうやったら「できる」ようになるかをゴールとして設計されているので、その分とても辛いですが、必ず力になります。

大人の学びは、仕事や家庭などと両立しながらになるので、「自分にできるだろうか?」と不安になる方もいらっしゃると思いますが、私自身は「不安を払拭できたから」入学したわけではなく、不安なまま、「えいやー!」でとりあえず飛び込んでみたという感じです(笑)。科目等履修生でも、正科生でも、 まずは飛び込んでみれば、辛い時に励ましてくれる同期も、伴走してくれる先生方もいるので、お待ちしています!

(2019年10月メールインタビュー)

※ 登場している方々のご所属および本専攻のカリキュラムや科目に関する記述は、インタビュー当時のものです。