第5期生 鐘ヶ江 力さん
鐘ヶ江 力さん 第5期生
株式会社CSK ITソリューション社
主査
現在のお仕事について簡単にご紹介ください
文教向けビジネスを担当しておりましてBlackboard社(※1)製品を使ったソリューション展開を全国の大学に向けて行っています。
教授システム学専攻(以下,GSIS)に入学しようと思ったきっかけを教えてください
ちょうど今年で40才になるんですけど、30代にかなり働きづめでしたので、40代の自分をどうしようかと悩んでいたんです。 これまで10年近く教育業界で仕事をさせていただいていたので、この業界に貢献できることを何かしたいと漠然と思っていたところに、私が所属する会社から 今後のビジネスを支える人材を育成するために誰か本専攻へ入学させようという話が出て、思い切って「行くなら私しかいません。」と大胆にも手を挙げまし た。自分が何かやりたいと思った時に、本当にタイミングよく会社の支援を得られました。
本専攻のことは私どものお客様(注1)でもありますので2003年の設立の頃から知ってました。 中野先生、喜多先生、松葉先生や他の先生方とも面識がありました。鈴木先生のことも岩手県立大学にいらっしゃったときに、日本のインストラクショナルデザ インの第1人者だということをお聞きしていて直接お会いすることはなかったのですが、岩手県立大学には何度か営業で行ってました。すれ違っていたかもしれません。IGRいわて銀河鉄道に乗って、滝沢駅からてくてく歩いて・・・。
林を切り開いたところに大学がぽかっとあるんですよね。
そうそう(笑)。すっごいとこやなーと思って。
– 全国各地の大学に訪問されているんですか?
そうです。北海道から沖縄までお客様がいらっしゃいます。 入試のときに実績としてアピールしようと思って数えたら、(お客様も含めて訪問した大学の数が)133もあってびっくりしました。
それでは、実際にGSISに入学されていかがですか?
大学院のイメージが変わりました。やはり社会人の方が多いこともあって、みんなすごく志をもってるし、一緒にやっていると、すごく学びあえてると感じますね。もし、大学時代の自分だったら、SCC(ストーリー・センタード・カリキュラムとかは「なんでこんな実験的なことやらされなあかんねん」と思うかもしれないですが、今だと、みんな受け入れて、一緒にやっていこうと思っているんですよ。そういうのって、他にそんなにないじゃないですか。教えてもらうっていうより、自分で学びぬかないと前に進まないっていうスタイルが、よう設計できてるなぁと。
今までたくさんご覧になってきた大学と違いますか?
私が担当しているeラーニングの導入についても、なかなかその価値を理解いただけなかったり、誤解されることも良くあります。2002年から始めています が、そのころは先生方の中から「私がいらなくなるシステムですか?」という質問をよく言われました。でも本専攻のeラーニングは、先生方が皆さん教育に力を入れておられますし、教材についてもLMSの機能を生かして練りこまれているという印象がありますね。
教員や学生間のコミュニケーションはどのようにとられていますか?
基本的にSkypeでのミーティングが中心ですが、携帯メールとか、電話で直接話をすることもあります。 でも(WebCT内の掲示板への)投稿がメインですね。それから個人的なやりとりはメールで。最近はfacebookもはやりつつあります。
たとえばID1で(課題提出が遅れて)挫折しかけてたんですけど、(同じく進捗の遅かった学生が)頑張っているのを見て、一緒に慰めあいながら終わりました。「最後までもうちょっとですね」とかメールを出し合って。
入学してから1年たちますが、今の段階で収穫だと思っていることはありますか?
周りの人にやさしくなれました。
やさしく?どういう意味でしょう?
仕事の上ではマネージャとして担当のメンバに、親としては子どもに対して「できない」ことを指導したりするわけですが、結構厳しかったと思います。でも、本専攻の受験勉強で公開講座として提供されていた(GSISのWebサイト上で公開されている)「基盤的教育論」でキャロルの時間モデルと出会ったことで考え方が変わりました。なんてすばらしいんだと。(キャロルの時間モデルは)希望が持てるじゃないですか。
「できない」という状態は、その人が悪いんじゃない。そこから学べばできるようになる。それは「状態」であって「良い悪い」じゃないと思います。「できないこと」を「なんでできないんだ!」と怒ってもしゃーない。 (学習者に対して)必要なインストラクションがあって、彼ができるようになるだけの時間が必要で、それを渡してあげることで彼は変わるはずなんです。
ついこの間、自分の子どもに縄跳びのあやとびを教えるときに言いました。 なかなかできなくて、どうせできひんねんって言い出したので
「お前ができひんのは悪いことじゃない。 やろうとせえへんのは怒るけど、できひんのはしゃーない。 練習すれば絶対できるようになるからやってみよう」
そういう意味で、人にやさしくなりました。
やっぱり、こういう学び方を知ると、教え方も変わるんじゃないかなと思います。今、学びのプロになりたいです。普通の学生とかも、学び方を知らないですよね。高校から大学にあがってきても、高校までの授業のスタイルしか知らないから、大学に入学して、いきなり大学の学びのスタイルになれっていっても無理なんですよ。実は学習理論を教えてあげたほうが、自分でできるようになるんちゃうかな。自分が学ぶときにはこうなるっていう作用がわかるから、先生がやってることに納得できるんじゃないかな。
学んだことは、お仕事に活かせそうですか?
すでに日々やってます。まず、熊大で教育工学を勉強してますと(営業先で)言うと、驚きがあったりとか、コメントを求められたりするようになりました。こういう形でこういう風にやると良くなるんですよ、と学びたての知識ですが何とか答えます。
それから私も熊大で学生としてeラーニングで学習してますよって言えるのがすごく良いです。普通は私どものようなベンダーって提供する側なんで、大学の現場でeラーニングを実際に使った授業をしたり、受けたりするわけではないんです。それが私も eラーニングで学習していて、こういうアクティビティがあると、こんな風にできるんですって言えるわけです。説得力が違うと思います。
では、GSISでeラーニングをやっていて困ったこととかはありますか?
学習の時間を作るのって難しいですね。特に後期は業務が集中して、全然時間がとれない状況が続いていました。時間の管理が一番しんどいです。
仕事と勉強の両立は、どう工夫して乗り越えたんですか?
家帰って、飯食ってから、勉強は朝4時までやる。4時以降はやらない。と決めました。それ以上は次の日の仕事に影響がでるので。睡眠時間を削ることになりますけど、やるしかないです。
入学を考えている方へメッセージをお願いします。
今の日本の教育をもっと良くしたい。その仲間が欲しいんです。
教育の現場に教育のプロを増やさないと絶対良くならないです。良し悪しの判断や「これではいけない」という問題意識も高いレベルでやろうと思えば、経験だけではなく理論も必要になると思います。知らないと、それが悪いこともわからない。やっぱりこの専攻が育成するような 教育のプロが必要なんです。
(2011年2月インタビュー)
※1 | Blackboard社:鐘ヶ江さんのご勤務先である(株)CSK社は、米国Blackboard社のLearning Management System「WebCT(新名称はBlackboard)」の日本における販売代理店です。 |
※ 登場している方々のご所属および本専攻のカリキュラムや科目に関する記述は、インタビュー当時のものです。