FD活動の客観的な成果分析の枠組みについての提言(2021.3)

FD活動の客観的な成果分析の枠組みについての提言

教育活動の成果を評価する指標には様々なものが考えられます。FD活動をより客観的に評価し、その成果を確認していくことは、効果的なFD活動を継続していくために不可欠です。本センターでは、FD活動の客観的な成果分析の枠組みについて、以下のように提言します(本センターのこれまでの活動のなかでは、「公開講座」に各レベルでの成果分析の先進事例が紹介されています。併せてご覧ください)。

FD活動については、例えば研修会を何回実施し、何人の参加者を得たかが報告されることが通例です。それに加えて、受講者からのアンケートに基づいて、今後の活動計画などを策定することもよく行われています。さらに、活動の成果を客観的に評価するために参考になるのは、1959年にカークパトリックによって提唱され、企業などの研修を評価する枠組みとしてデファクトスタンダードになっている4段階評価モデルが参考になります。

 

出典:鈴木克明(2015)『研修設計マニュアル:人材育成のためのインストラクショナルデザイン』北大路書房

 

4段階評価を参考にFD活動を評価する場合、以下のように当てはめることができるでしょう。FD活動を行い、参加者が多数得られたこと(あるいは参加率が高かったこと)は、4段階には含まれていませんので、レベル0としました。これは、4段階モデルでは、研修(FD活動)を行うこと自体は目的ではなく、手段と捉えられているからです。

・レベル0:イベント開催数、参加者数(年次変化)
・レベル1:イベント参加者アンケート調査(年次変化)
・レベル2:参加者の学習成果(修了証授与数)⇒ここからはできていない場合が多い?
・レベル3:参加者の行動変容(フォローアップ調査)
・レベル4:参加者の行動変容のインパクト
  4-1:授業改善による学生の授業評価結果の向上(受益者のレベル1)
  4-2:単位取得率の改善(受益者のレベル2)
  4-3:関連資格取得数・率の向上(受益者のレベル3)
  4-4:FD活動の位置づけ・認知度や受容度や期待の変化(FD活動のレベル4)
      ⇒FD担当者組織の拡充、人員の増加なども視野に入れるか

カークパトリックのレベル4は、組織レベルでの結果ですが、大学などにおけるFD活動の場合は、そこから収益をあげることなどは求められない場合が多いため、教職員が研修を受けることによって参加者の行動が変化したことの受益者である学生にどのようなインパクトがあったかを確認することが考えられます。さらに、FD活動の成果が学内、あるいは学会などで認められ、FD活動に対する予算措置や人員措置が得られるという組織的な結果も視野に入れることもできるでしょう。

以下NADEの評価指標を参照ください。

出典:鈴木克明・美馬のゆり・山内祐平(2011.3)大学授業の質改善以外の学習支援にどう取り組むか:学習センター関連資格制度についての米国調査報告.日本教育工学会研究論文集11-1:181-186